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9人目 ページ9

夜空に響く銃声によって、私のその願いは永遠に叶わないと知った。

急いで階段を駆け上がって扉を開けたらそこには、諸伏に駆け寄る零と冷酷な光をその目に灯すライ。

「スコッチはライがやったの?」

「ああ。裏切りには制裁を持って答える……だったよな?」

撃ち抜かれた携帯を抜きとるライ。

「そうね。携帯は惜しかったけれど、仕方ないわ。」

諸伏は最後まで仲間の事を考えて行動したのか…

悔しい……

もっと早く…
ライよりも早くに着いていればなんて、もう遅い。

「・・・」

憎しみの炎を宿す零は、必死に衝動を抑えている。

彼はライがFBIとは知らない。ボロを出しては自分が危うい。それは日本にも損害を出しかねない。

そう、思っているのだろう。

私もそのふりをしなければいけない。自分とか日本とかじゃなくて、零を騙す為に…

「後は私達がやっておくわ。バーボンは帰りなさい。」

「なっ!?」

「顔色が悪いわ。1番仲が良かった人が裏切り者だったなんて、相当ショックな筈よ。」

こんな時にこんな言い方しか出来ないのが苦しい。

「おや、バーボンには優しいんだな、テネシー。」

本当に意外だという風に言うライ。

「まさか、私が彼を本当に始末したいだけに決まっているでしょ?」

ライの耳元で囁くと彼は滅多にしない表情を浮かべた。

恐怖を感じたかの様な、僅かな怯えが浮かんだ様な、らしくない顔。

滅多にどころか、初めて見る表情だ。
それもすぐに隠れたあたり、彼の能力の高さが伺える。

そんなやりとりをしている間に心を決めたのだろう。零が苦い顔で溢した。

「わかった、後は頼む。」

そう言って彼はこの場から離れていく。扉が閉まり数秒の後聞こえてきたソレに、息を飲んだ。

まさか…

最悪な予想に息がつまる。金属製の階段を降りる音が扉越しにも聞こえる。

あの緊迫していた状況でこの音が聞こえたら……

「ねぇライ、本当に貴方がやったの?」

ライには悪いがそれが真実なのだと言ってくれたなら、どんなにいいか。
そんなの状況から見ても嘘だとわかるのに…

自決の理由がこの音だとしたら、なんて残酷なんだ…

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作者名:89* | 作成日時:2018年9月24日 17時

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