ねがてぃぶがよんじゅうはち ページ49
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目を細めた沖田は、その広い背中に向かって毒を吐くような顔をしながら言葉を続けた。
「それ、なんで朝霧に直接言わないんですかィ」
「何があったのか知らんが、アイツにとっちゃ深く踏み込まれたくない事だろ」
「朝霧のこと信用しなさすぎでさァ」
「…何を言ってるのかわからないが、信用はしてるさ、剣の腕だって認めてる」
土方が何を言っても、背後の猛獣の視線が鋭くなるばかりだった。
それをひしひしと感じつつ、臆することなく続ける。
「ただ朝霧は自己主張が苦手な奴だ、自分のことひとっつも話そうとしねえ。
アイツにとって母親がどんな意味を持つのか、わからなかった」
それは土方なりに、彼女について考えた結果だった。
朝霧も朝霧だが、彼もまた不器用である。
朝霧が抱いている劣等感や不満は知らず、ただ純粋に心配しているだけ。
それが返って彼女を不安にさせていることも、土方は知らなかった。
____ただし沖田は知っている。
否、長い間朝霧を見てきたため、理解できるようになってきたと言うべきかもしれない。
さらさらの髪を乱雑に掻き乱し、この混沌とした現状を彼なりに憂いていた。
………嘘、土方はどうでもいい。
「そういうとこだっつってんでィ…はあ…、
まあいいや。朝霧となら見廻りぐらい行ってもいいですぜ、ってわけで」
くるりと踵を返す。
「もう出発したんじゃねえのか?車だぞ、追いつけねえよ」
漸くこっちを振り返った土方と、その言葉にぴたりと歩みを止める沖田。
今度は沖田が土方の方を振り返る。
そこには不思議そうな顔をするむかつく野郎がいて、沖田は鼻でそれを笑った。
「土方さんって、本当に朝霧のことわかってないですねィ」
「………はあ?さっきから何なんだお前、朝霧朝霧うるせえぞ」
_____懐から鍵を取り出すと、一瞬にして土方は黙り込んだ。
それは間違いなく、朝霧が忘れていったものだった。
今頃車の前で右往左往していることだろう、参謀さんの姿がありありと目に浮かぶ。
「こゆことでさあ、…アイツみてえなドジが普通に車に乗れるわけねェ」
「………何でもいいが早く行ってこい」
土方は頭痛のあまり、再びため息をついた。
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ヤマダ電機(プロフ) - 城崎 茉孤さん» 恐縮です…嬉しいお言葉ありがとうございます…!励みになります😭 (1月6日 22時) (レス) id: 7a7cca59ad (このIDを非表示/違反報告)
城崎 茉孤(プロフ) - 好きです…、文字書きとしてはクソみたいな感想投稿しちゃって申し訳ないんですけど、超好きです…。 (1月6日 12時) (レス) @page50 id: 8e9637cb28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤマダ電機 | 作成日時:2023年12月10日 21時