ねがてぃぶがさんじゅうきゅう ページ40
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ねこさんの脇に手を回し、そのまま正面に持ち上げた。飼い主として私が諭さねばならない。
「ねこさん暴力はダメだよ」
「いってェェェ!!確実に殺しにきてやがるコイツ!!!」
「沖田も小さい子相手にあんなこと言ったらダメだよ」
「テメー飼い猫の躾ぐらいできねーでどうすんだ!」
「まあ…それはそう……」
沖田がねこさんに嫌われてる理由は喧嘩売るから、ってことはよくわかった。
一瞬言い返しそうになってすぐにそれを飲み込む。
沖田が煽るから、っていうのもあるけど、躾できてないことが悪いって言われちゃったらぐうの音も出ない。
ねこさんを掲げていた手を下ろすと、不貞腐れた様子で出ていってしまった。まあ猫ってそういうものだろう。
自身の懐を漁る。
「沖田、絆創膏貼るから許して」
私はしょっちゅうドジ踏んで怪我しまくるため、常に絆創膏を持ち歩いている。良いか悪いかはわからない。
「ちっ……」
唇を尖らせつつ、沖田は大人しく傷跡のついた腕を差し出してきた。
……抉るつもりでこれ引っ掻いてるな……、さすが真選組の猫と言うべきか、私の教育不足と言うべきか……。
想像よりも深くて痛そうな傷口に顔を顰めた。
「……これ包帯レベルだ」
「あ?怪我なんざ慣れてらァ、舐めときゃ治る」
痛みの割にゃ大したことねーな、と呟く沖田を前に、あまりにも信じられなくて私は目を見開いた。
……だって、私からしたら結構な傷だ。
基本副長と一緒に行動だから、前線には居るはずなのだけれど。
私ってそんなに臆病な戦い方してる…?
そこまで思案し、やっと沖田は一番隊隊長だったなと気がつく。
当たり前か、被弾する回数なんて彼の方が多いに決まってる。
「…凄いね沖田は」
「なんでィ改まって…別に凄くなんかねーよ」
……別に、傷つくことがいい事だなんて思ってないけれど。
本当に何とも思っていなさそうな彼の表情に、胸がチクリと傷む。
多分、沖田が傷つくのが当たり前になるのが、少し怖かったんだ。
私だって彼が大事だ。真選組である手前、傷ついて欲しくないなんて口が裂けても言えないけれど。
「……っちょっと洗って待ってて、
包帯取ってくるから」
……一瞬で膨らんだ悪い想像に、私は逃げ出してしまった。
沖田を失うのは、……怖い。
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ヤマダ電機(プロフ) - 城崎 茉孤さん» 恐縮です…嬉しいお言葉ありがとうございます…!励みになります😭 (1月6日 22時) (レス) id: 7a7cca59ad (このIDを非表示/違反報告)
城崎 茉孤(プロフ) - 好きです…、文字書きとしてはクソみたいな感想投稿しちゃって申し訳ないんですけど、超好きです…。 (1月6日 12時) (レス) @page50 id: 8e9637cb28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤマダ電機 | 作成日時:2023年12月10日 21時