甘味処営業中です【鬼滅の刃】

花街 参 ページ15

＊


私たちの間に少しの沈黙が生まれる

炭治郎くんは先程から下を向いているのでその表情は読み取れないが、耳の色が彼の羞恥心を物語っていた。


『ふふっ炭治郎くんは可愛いなあ、

冗談だ「Aさん」ん？』



私の言葉を遮って炭治郎くんが私の名前を呼ぶ

次の瞬間私の顔の数センチ先に真っ赤な彼の顔があった
咄嗟に後ずさろうとしたものの、ごつごつした男の子の手にぎゅ、と手首を掴まれて身動きが取れない



「Aさん」

『うぉ…は、はい』


もう一度私の名前を呼び、彼は私に顔を寄せて低い声で言った



「______俺だって、男なんです

あんまり可愛い可愛いって言ってると、」





_____痛い目見ますよ





『は、はい…………………………』




いつもニコニコして可愛い笑顔を振りまいている彼の行動に驚いてただ頷くことしか出来なかった

や、やばい…竈門炭治郎やばいぞ…


彼は正座に戻って頬を染めながら こほん、と一つ咳払いをした


「わかりました？Aさん」

『あっ、うん…』



じゃ、もう行きましょうと言ってそそくさと部屋を出た彼の耳はまだ赤かった



＊



『 (鯉夏花魁綺麗だったな〜あれは身請けしたいレベル) 』


そんなことを考えながら【ときと屋】を出ると外はもう昼下がりの時間になっていた

早く帰ろうと足早に歩いているといきなり誰かに手を掴まれた


『うぉ』

「やあ君可愛いね」

『はあ…それはどうも』



誰だこの男の人


私の顔は平凡だよ？
びっくりするほど平々凡々だからね？
謙遜とかじゃなくて


どう考えてもお世辞にしか聞こえない褒め言葉を聞き流して自分の記憶を探るが、この人に一致する人はいない





「うちで働く気は無い？」



『アッ間に合ってますね』




そう言ってもその人はなかなか手を離さない
もうなんかめんどくさくなってしまって、振り切って逃げようかなどと考えていると、

突然私の真後ろから声がした






「……オイ、何やってんだお前」

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