【戦国BASARA】竜と馬鹿姫と、その娘。

二十六話　愛しい ページ27

貴女side


『う……』

「母様ッ！」「A！」

『いろは…まさむね、さん…』


ズキリ、痛みで目が覚めた。
目に映ったのはいつも見ている自分の部屋。
運ばれたんだと理解するのに数秒かかり、次にはあの二人に名を呼ばれた。


「大丈夫ですか！？」

『だ、大丈夫だよ。心配しないで―』

パシッ

『え…？』 「父様…？！」


身体を起こすと五郎八が支えてくれた。
色々な箇所が痛んだが心配かけまいと笑顔をつくったとき、パシッと音を立てて頬を叩かれた。
驚いて見ると、それをやったのは政宗さんだった。


どうしよう…本気で怒ってる。怖い。初めて見た。
迷惑掛けすぎて、嫌われちゃった…？ どうしよう…！

「…馬鹿かお前は！！」

『ご、ごめんなさ…』

「こんなに心配掛けやがって…！」


私に向けられた政宗さんの瞳が怖かった。
怖くて恐くて俯いて身を震わせてると、怒鳴られた。
ポロポロと涙が零れる顔をなんとか上げて謝ろうとすると、抱きしめられた。
その彼の身体は、酷く震えていた。


『ご、めん、なさいっ…ごめんなさいっ…！』

「ったく、絞められる前に叫んだりして助け求めろよ。
お前のその口は、一体何のためについてるんだ」

『…まさむねさんって、いろはって呼ぶためについてるの…！』

「母様…」


ぎゅうと抱き返して何度も謝った。
安心からもう涙が止まらない。
何のために口があると言われ、私は迷わず、政宗さんと五郎八を呼ぶためについてるのだと答えた。
その瞬間、娘からも涙が零れ落ちた。


「お、おい、何でお前まで…」

「あの男に母様が殺されるって思って、心底怖かった…！
絶対失いたくない…母様…！」

『ごめん、ごめんね、いろは…。
忠告無視して迷惑掛けて…』

「迷惑じゃないっ！
母様が死んでしまう方がよっぽど迷惑だ！」


驚いた政宗さんは私を離した。
ボタボタと大粒の涙を零す五郎八に謝ると、ぎゅうと抱きしめてきた。
その身もやはり酷く震えていて、心が痛んだ。
その反面、とても愛しく思って抱き返した。


「ったく…俺の“宝者”は泣き虫だな」


仕方ない奴だと笑う政宗さん。
ふうっと溜息をついたかと思えば、抱きあう私と五郎八を抱きしめた。
その大きな胸が、逞しい腕が酷く愛しい。


「「…？！」」

『…まさむねさん、いろは…本当に、ありがとう』


二人がどうしようもなく愛しくて頬に口づけた。
驚く二人に笑って礼を言うと、二人は紅い顔を隠すようにまた私を抱きしめたのだった。

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