【戦国BASARA】竜と馬鹿姫と、その娘。

十五話　呼び方 ページ16

政宗side


『ごめんね、幸村…。迷惑掛けちゃって』

「迷惑などとは思っておらぬ。
此処へ一番に来てくれて嬉しいが、見せつけられて悔しく思う」

『ホントにごめんね…』


やっと涙が止まったAは、疲れて眠ってしまった五郎八を撫でながら、真田に謝った。
真田は眉を下げて答え、それに対して妻はまた謝った。


「だんなー。ちょっと来てー！」

「解った！ すまぬ。少しばかり席をはずすで候」

『あ、うん！』

「『…』」


猿に呼ばれた真田は、立ち上がり、ぺこりと頭を下げて去ってった。
仲直りしたハズなのに、気まずい雰囲気になった。


「なあ、A」

『はい？』

「俺も、敬語なしの呼び捨てにしろよ」

『へ？』


お互いそわそわとするあたり、初恋かとツッコミたくなった。
先程からもやっとする事を言おうと名を呼ぶと、Aは此方を見た。
俺の言葉に、妻は首を傾げた。


『ど、どうしてですか…？』

「どうしてもなにも、まず俺の方が年下だし、出逢った時から呼び捨てで良いつった。
それに…真田に先越されたみてぇで腹立つ」

『まさむねさん…』


Aは目を丸くしながら首を傾げ、問うてきた。
それに内心悶えつつ、納得するであろう理由を述べた。


『じゃ、じゃあ、少しずつそうしていきます』

「練習しようぜ。今」

『いいい今？！』

「ああ。ほら、言ってみな。“政宗”」


Aは眉を下げてはにかみ、深く頷いた。
それにニヤリと笑って、手を引いて自分の御座をかく上に対面する形で乗せ、練習しようと諭した。
顔を紅くして驚く妻に、俺はクスッと笑った。


『そ、そんな…すぐには無理ですよ、政宗さん…』

「政宗、だ」


両手を俺の肩に置き、耳まで赤くして目を泳がせて無理だと言うAが可愛くて。
少し高い位置の妻を見上げると、耳元に近づき、政宗だと囁いた。


「kissもしてんだから、呼び捨てぐれぇ大したことねぇだろ？」

『それとこれとは、話が別です…。―ま、まさむね』

「…！」


うなじにつつと指を滑らせれば、Aの身体はビクリと跳ねて。
恥ずかしがりながら政宗と呼ばれ、なんだかこっちまで恥ずかしくなった。
というより、予想を上回る可愛さ。なんとけしからん。


「中々cuteだな、honey？
―…上出来だ。褒美にkissくれてやる。
覚悟しろよ……My sweet」


Aの紅い唇に触れ、ニっと笑った。
後頭部に手をまわして逃げられないようにすると、俺は何度も甘いkissをしたのだった。

十六話　昔の写真→←十四話　本心を

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す