千人目の君。2【朔間凛月】 (ページ20)

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真「で？なんでAにチョコいらないなんて言ったんだ？傷ついたらどうすんだ？」

晃「そうだぞリッチ〜。アイツの気持ち考えろよ。」

凛「要らないなんて言ってない。渡さなくていいよって言ったの」

真「何が違うんだよ？！ったく……なんで言ったんだよ？」

凛「……俺が、渡したいから。Aに、……バレンタイン。」

渡して、びっくりした嬉しそうな顔を見たかったから。
繰り返す出会いの中で、何回目かはもうわからないけど、俺から渡したことがあった。確か今とは違う国にいたとき。
その国では男が女性に贈り物をするのが当然で、あの時の彼女は心底嬉しそうに、可愛らしく顔を綻ばせてくれたのだ。
だからまた、あの顔が見たいと思った、のだが。

凛「…あんな怒るとは思わなかったの」

真「あのなぁ、せめて前々から言っておけって…」

晃「アイツがもうチョコ用意してくれてるとは考えなかったのかよ」

凛「………そう思ってさっき言った」

晃「ハァ〜〜〜〜〜〜………」

真「お前なぁ…」

うんざりした顔の2人に頭を抱えられる。
前に実行した時は、そもそも国の風習が違ったからAは贈り物は用意してなかったのだ。
だから自分の贈り物が成功したのだということには今気がついた。幾度も彼女の恋人になっておきながら、呆れられても仕方がないザマである。
とにかく、今日中に彼女に渡さなければ挽回できないだろう。

凛「Aに謝ってきて、受け取ってもらわなきゃ。」

真「そうだな。せっかく用意したんなら渡せよ。仲直りできたら、Aもチョコくれるかもな。」

晃「頑張れよリッチ〜。ちゃんと謝れよ！」

しょうがないな、と言いたげな目で激励してくれた2人を背に、不貞腐れた可愛い恋人に会いに行く。

『……なに？』

机の正面に立つと、キロリと視線を移される。

凛「放課後、Aの時間が欲しいな。いい？」

『……………………。』

だんまりな彼女から視線を逸らさず、根気よく見つめていると、はぁと息を吐いて眉間のシワを緩めた。

『わかった、放課後ね。いつもの昼寝スポットでいい？』

凛「いいよ。じゃあ放課後ね。」

約束が成立されると、またプイッと目を逸らされた。
一見可愛らしいように見えて…実際も可愛いのだが、普段の柔和な彼女を知っているから、これは結構怒ってる時のやつだなと察した。

(お姫さまとの仲直り作戦、練るかぁ……。)

その前に一旦、HRは寝ることにしよう。

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