第49話 ページ49
『ただいま！』
「パパ、ママ！」
「クリス、アリス！」
玄関を開け声を上げるなり、すぐにリンゼー、次にネルソンの抱擁を受ける。今までの心配が見て取れるような、今すぐにでも泣き出してしまいそうな顔で2人に縋り着いた。
「良かった、無事だったのね……！」
「遅かったじゃないか。帰りに2人で遊んでいたのか？」
『ち、ちょっとね！ね、クリス』
「うん……！」
リンゼーとネルソンは、2人の上擦った声が聞こえているかどうかも怪しいほど、抱きしめる腕に力を込めていた。その様子を、少し離れた所でチャックが苦笑を称えつつ見守っていたのだった。
＊
「いやあ、パパは全然平気だったよ？ パパも2人の歳の頃は、毎日寄り道をしたものだ。ハッハッハ」
「そうよ。それくらい当たり前よね」
待ちに待った親子水入らずのディナー。娘と息子の手前、余裕を引っ提げて笑ってみせる両親だったが、待っている間の慌てぶりをチャック、おまけにエラやタナカにまでカミングアウトされた彼らは頬を染めて遮る。
そんな様子を窓の外から見守るテイルスとエミーは、部屋の中の笑い声を心地よい音楽のように聴いていた。
「クリスとアリスのパパとママも、皆楽しそうだね」
「ええ。本当に良かったわ」
「ソニックー、こっちにおいでよ」
テイルスは、相変わらず夜も1匹屋根の上で寝そべるソニックを呼ぶも、彼からの返答はない。
「……やっぱり迎えに！」
「あなた。2人を信じてあげて」
昼間、同じ位置で盗み聞きしていた両親の会話を脳裏に浮かべる。そして次に漏れたのはため息だった。
ネルソンは大手会社のCEO、リンゼーは大人気女優。そんな2人が家を空けるのは当然で、帰って子供達の父、母として振る舞う時間より仕事を優先するのは仕方の無いである。
学校の登下校は普通の子供と同じように……。迎えを提案したタナカにエラはそう言っていたが、ソニックが気に食わないのはそこではなかった。
痺れを切らした彼らが起こした次の行動が、軍隊やテレビ局への電話だったことだ。結局最後は他人頼り。いくらアリスやクリスがパパ、ママと慕っていようと、第三者から見ればなんとも薄っぺらい関係にしか見えなかった。
こんな時だけ親ヅラかよ。
ボソリと呟いた悪態は、屋根の下で幸せそうに笑うアリス達の声にかき消された。
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A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
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