第47話 ページ47
アリスは笑うでもなく怒るでもなく、口を開けて呆然としていた。放心状態、の方が正しいだろうか。それが逆にダンを焦らせ、心臓の拍動を速める。
彼……ダン･ヤップは、謎の青いハリネズミ･ソニック、そしてそれを匿うソーンダイク家、中でも長女であるアリスの動向を監視し、情報を探る為に送られた政府直属の新米エージェント、コードネーム“スチューデント”だった。
同じ目的でアリスの弟であるクリスの元へ担任教師としてスパイに勤しむ“ティーチャー” 基、スチュワートとは同期として活動している。先程、小学校に現れた謎のマシンが自分を差し置いて教鞭を執っている、とダンに泣く泣く緊急要請を送ってきたのも彼だった。
潜入捜査を開始してから1週間も満たない。それなのに今、自分の正体を監視対象であるアリスにバレるわけにはいかなかった。冷汗だらけの顔に無理やり笑顔を浮かべると、なんとか取り繕おうと空笑いを浮かべる。
「あ、あはは、“ボク”、実は俳優にも憧れててね！オーディションに応募したら審査員が電話越しに演技しろなんて言うから、」
『……ダンってさ』
「ハイッ！？」
静かな声色でダンの早口を遮ったアリスは、じっと彼を見つめている。その表情は怒りでも悲しみでもない。基本単純な感情表現をしていた彼女の表情が、ダンには全く読めなかった。焦りを倍増させ、もはや言うしかないかと腹を括ったダンを差し置いて、アリスは口を開く。
『元から胡散臭いとは思ってたんだけど……なるほど、そういうことね』
「う、胡散臭……」
『新しい環境だし、最初はちょっと性格取り繕っちゃう気持ち、凄く分かるわ。私もそうだったもの』
「あの、それは」
『でも隠すことないわ。だって、ありのままの自分が恥ずかしいなんて……そんなこと思う必要ないんだから』
「！」
穏やかな笑顔を浮かべて言ったアリスから、ダンはしばし目が離せなかった。
「ありのままの自分が恥ずかしいなんて、そんなことは無いだろ？」
元々この言葉は、アリスの車椅子登校を手伝ったソニックが彼女に向けたものだった。ソニックにとっては何の気なしに投げかけた疑問のつもりだったのだが、彼女の心の中にはしっかり刻まれていた。
それはダンも同様であった。第三者、しかも自分が追っているソニックからの受け売りの言葉などとは露知らず、その言葉を噛み締めるように唇をぎゅっと真一文字に結ぶ。
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A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
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