第22話 ページ22
《あ、あの、アリス、》
『そうだ。サラは私がエリザを庇ったとか言ってたけど、実は助けてくれた人がいてね……』
《おいサラ、何勝手に！》
《わわっ、じゃあねアリス！また学校で！》
画面の端に、オスカーの普段の甘いマスクからは想像できない顰めっ面が顔が映った瞬間に、ビデオ通話はプツリと切れる。アリスはあらら、とどこか清々しい笑顔のまま、2限目の授業に行くための準備を始めた。
*
「お前な、人のパソコンで悪戯すんなってあれほど、」
「ねえ、オスカー」
眉を顰めて説教を始めるオスカーを遮ったサラの顔は真っ黒な画面に向けられたまま。画面に反射する彼女の顔はどこか罪悪感に駆られていたようだった。
「もう止めようよ、アリスのこと揶揄うの」
「……は？」
「あの子ね、いつも虐めてるあたし達に、来てくれて嬉しかったって、心強かったって、ありがとう、って……そう言ったの」
オスカーは息を呑む。その傍ら、あのビルの玄関でエリザを守るようにして抱えていたアリスの顔を思い出した。ボロボロになった自分の足になど目もくれず、腕の中で気絶するエリザの頭から流れる血をハンカチで抑えて止血していた、真剣そのものの表情を。
そもそもあの時の自分達はパニック状態で咄嗟の行動を取っただけだったのに、それに対しアリスは礼を言ったのだという。普通に考えれば当たり前の事であるが、何故か心が傷んだ。ありがとうなんて、いじめっ子同然の自分達に言う筋合いは無いはずなのに。
勉強も、為人も。つくづく落ち度のない奴だとオスカーはため息をついた。
「年下だって嘗めたり、嫉妬したり。エリザの言う通り、子供なのはあたし達の方ね」
「……サラ、」
「……これも、エリザにちゃんと謝って返さないと」
手元のファイル……論破された腹いせにオスカーが隠した、エリザの失くし物に目を落とす。その後またオスカーを見上げたサラの目からは、先程のような悪意は零れ落ちたように無くなっていた。
オスカーはサラの前のパソコンを手に取り、踵を返すとつかつかと歩き出す。サラは慌てて後を追った。
「お、オスカー？どこに行くの」
「決まってんだろ大学だよ。アイツのこと呼び出しといて、先に待ってねえとカッコつかねえだろ！」
「……ふふ、うん！」
*
一方ソーンダイク邸では、登校の為バッグを持ち上げたアリスがくしゃみの反動で痛めた足に落としてしまうという失態をしでかしたことは、2人は知らない。
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A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
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