第3話 ページ3
やっとの思いで、1人と1匹はプールから這い上がった。クリスはずぶ濡れになったことなど気にしないといった様子で、咳き込み続けるソニックの背を優しく撫で続けた。
「げほっ、げほっ！」
「だ、大丈夫……？」
『クリスっ、怪我はな、い……？』
アリスはタオルを手に足早に駆け寄ると、弟の隣の“それ”を視界に捉えた。
大きさからして猫ではない。刺々しい毛並み、小さな耳、大きな目。それらは何らかの動物であることを明らかにしている。しかしそれが何かを特定する事はすぐには難しかった。咳き込み終えたその“動物”は、まるで人間のように一息つくと口を開いた。
「ああ、大丈夫だ。Thank you」
「……！キミ、喋れるの？」
「？ 当然だろ？」
首を傾げるソニックの大きく純粋な翡翠の瞳を呆然と見つめ、クリスはすごい、と呟き、アリスはとうとう言葉を失う。逆にソニックの方も静かに凪ぐ海の色をそのまま映し出したような彼らの瞳をじっ、と見つめていたのだが、そんなことは気にも止めなかった。ソニックとクリス、互いが体から滴らせる水滴が、乾くコンクリートを黒く染めていく。
「ぼ、ボクはクリス。君は？君は、なんて名前なの？」
動物なのに当たり前のように喋る。自我だってしっかり持っているようだった。ますます謎は深まっていくばかりだが、このまま黙りこくる訳にもいかず。なるべく笑顔を心掛けながら、クリスは彼に問うた。
「オレはソニック。ソニック･ザ･ヘッジホッグさ」
その音速のハリネズミ、ソニックは、ずぶ濡れのまま得意気な笑みを称え名乗るのだった。
＊
「あと少しだからね〜」
所変わって、湯気の立つ風呂場。クリスの手でわしゃわしゃと洗われるソニックは白い泡に埋まり、面白くなさそうな表情を浮かべている。
ソニックは1箇所に留まることや縛られるのを嫌い、とにかく落ち着きがない。クリスに助けられてからもすぐさまソーンダイク邸を去ろうとしたが、姉弟に腕を捕まれると真っ先に風呂場に連行され、そして現在へ至る。
『ダメ！濡れたままじゃ風邪引くわよ！クリスも、えと……そっちの子も！』
また水を被るのかと抵抗するソニックにアリスはそう言った。
風邪を引くほどヤワではないのに。もんもんと考えるソニックだが、そんな彼の複雑な心情ごと包むようにどんどん泡が巨大化していく。
その大きな泡に口まで覆われてしまい、反論する気も失せてしまったソニックはそのまま黙っていることを決めた。
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A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
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