第16話 ページ16
これではエミーにやってしまった事の二の舞だ。この世界にやってきたばかりのナックルズには目の前の人間の少女の事など露ほども知らないが、ここで見捨ててしまえば本当に死んでしまうことだって有り得る。
「ナックルズのバカッ！！」
自分の目的を最優先したがためにエミーの気持ちを尊重しなかった。1人で行ってしまった彼女の声がフラッシュバックした。
込み上げる罪悪感に、ナックルズはバツが悪そうにもう一度頭を掻きむしり唸る。多少素直では無いものの正義感の強い彼にとって、もうあんな思いは散々だった。黙りこくっているナックルズに、アリスは心配そうに顔を覗き込む。
『あの……？』
「何でもねぇ。お前、名前は」
『あ……アリスです』
「そうか。じゃあ行くぞアリス、俺はエリザを運ぶ」
『はい。エリザを、どうか宜しくお願いします』
「は？お前は……」
『私は、ここで救助を待ってますから』
ナックルズの言葉を遮った蒼い瞳の少女、アリスは抱えていたエリザをナックルズに託すと、座り込んでそのまま動こうとしない。そんな彼女にナックルズが目を見開いて問うと、彼女はゆっくりと首を横に振った。
「なっ、何言ってんだ！ここもすぐに崩れるかもしれないんだぞ！」
『私は足がこうなってしまって動けないから……。それに、元はと言えば私が悪いんです。救助も待たずに非常口から降りようなんて言ったから。そうしなきゃ彼女が怪我することもなかったし、お気に入りのパンプスだって壊れずに済んだの』
ナックルズは少女が指さした金髪の女性の足元を見た。すっかり腫れた足、その近くにはヒールが折れた赤いパンプスが転がっている。少女を見れば、口元は笑みを浮かべているが、眉は八の字に下がり伏せられた目の中の青は漣のように揺れている。
『そんな私より、エリザに助かってほしいんです』
「お前……」
『お願い。あなたもやるべき事があるんでしょう？エリザだけなら簡単に外に出してあげられますから！』
加えて私も私なりに頑張ってみます！と足を潰しているコンクリートの瓦礫を両手で退けようとし始める少女。ナックルズはそんな彼女を暫し見つめた後背を向け、非常口へと踵を返した。
＿＿＿＿かと思えば、抱えていたエリザを離れた所へそっと置き、
「ンなこと出来るか、バカヤロ────ッ！！！」
勢い任せに瓦礫に自慢の拳を打ちつけたのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 41人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
