第15話 ページ15
「エミー！待てったら！」
一方、同ビル内。呼び止めるナックルズの声に答えずプイとそっぽを向いたエミーは、この災害に近しい揺れの中で奇跡的に動いていた1つのエレベーターのドアを、拒絶の意も込めて閉めた。
ソニックを助けに行く、と何度も言うのに冷たく突き放してしまったからエミーが怒るのは当然の事。とはいえ、彼女を1人にしてしまうと危ない。その事はちゃんと分かっていたのに。
「クソッ、どいつもこいつも……！」
舌打ちをしたナックルズの目に入ったのは、非常口の看板。多少面倒だが、他のエレベーターが動かない今、上に登る手段はこれしかない。
少々乱暴に非常口のドアを開く。にっくきライバルのソニックほどのスピードは悔しながら無いが、遅くはないという自負はある。全速力で駆け上がろうと意気込んだその時…ナックルズの耳は微かな声を捉えた。
─────だ……！た…け…！
声の高さからして女性だ。ナックルズは溜息をつき、上へ、声の元へ駆け上がって行った。声の主は案外近くにおり、蹲る後ろ姿を視界に移すと叫ぶ。
「オイ！何してやがる、早く逃げろ！」
『……あ、』
振り返ったのは水色の瞳の少女。顔と腕は擦り傷に作り、瓦礫に足が埋もれている。目は今にも泣きだしそうに揺れており、手元には項垂れる金髪の女性を抱えていた。
「ソイツ、怪我を……？」
『あれ、あなたは……』
必死に訴えてきたかと思えば、ナックルズの顔をじっと見つめる少女。静かな海色を映した瞳の彼女に見つめられナックルズは少々たじろいだのだが、
『……パニックくんに似てる。あれ、パニックだっけ……いや、パニックなのは私、よね』
状況にそぐわず力なくにへら、と笑う少女にナックルズは痺れを切らし、再び強い口調で叫んだ。
「笑ってる場合じゃねえだろ！さっさと逃げろ、死にてえのか！」
『！あ、あの……エリザを助けてあげて下さい！ 動けない私を助けようとして、それで……』
片足が瓦礫に埋まっている海色の瞳の少女の腕の中で、固く目を瞑る美しい女性。瓦礫を頭に受けたのか、頭から血を流して気を失っており、起きる気配もない。
ナックルズはそんな2人を何とかしたいと思いつつも、エミーを追わなければという気持ちで天秤に揺らされていた。何も言えずに乱暴に頭を掻く。
『早く病院に行かないと、だからお願い……！』
「……生憎だがオレは、」
そこまで言いかけて、ナックルズはハッと息を呑んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 41人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
