３話 ページ5
｢へぇ、さすがAだね。相変わらずいい演奏だ。｣
｢えっ、あれ？！ 土岐原先輩？！｣
突然聞こえた声に、私は驚き扉の方を向く。相変わらず神出鬼没すぎる、この先輩は。
｢久々じゃねぇの、その曲。よく弾けたなー。｣
パイプ椅子を私の目の前で広げ、背もたれに手を組みこちらを見つめてくる。相変わらずカッコイイなこの人は。
｢お世辞は結構です…！それより先輩、講義あるんじゃないのです？｣
｢１限は休講。先生が体調崩したっぽい。まぁ身篭ってるわけだししゃあないっての。｣
｢あ、梶原先生なんですね、１限は。｣
私たちの学科の担任が、６月出産予定なんだが体調がよろしくないとよく耳にする。本当に大丈夫だろうか、梶原先生。
｢まぁ、そのおかげで久々にお前に会えたし良かったわ。｣
｢はいはいそーですかぁー。オリエンテーション、練習行ってサボってたくせに…。｣
ボソリと呟くと、申し訳なさそうな顔をして｢ごめんって｣と言ってくる。とっきー先輩は本当に面白いなぁ。だから好きなんだけど。
｢にしても、誰も来ないもんですね、朝は。｣
｢来たら奇跡だよ？ あっ、でも、そろそろ赤司が来る頃かも。編曲教えてほしいって言われて俺も来たし。｣
｢へー…。そういや今年のアンコール、誰が編曲を？｣
｢んー？ 今年は赤司と桃井。結構いい感じだぜ。弾く？｣
私の好きな低音パート譜を手渡され、ざっと目を通してギターを構えてみる。メトロに合わせるのは苦手だが、頑張ってみよ。
｢……おぉ、弾きやすい。｣
｢だろー？ 俺1stするから、合わせよーぜ。｣
｢あっ、やった、しましょー｣
久々に先輩との演奏で緊張するけど大丈夫なはず。今だって弾けたのだし。大丈夫…うん。
｢じゃーいくぞー。１、２の…｣
息で合わせて私たちは演奏をする。近くで誰かが見ていた気がしたけれど、今はこちらに集中！
いつか、彼らとの重奏もしてみたいな、うん。
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【用語まとめ】
セーハ:ギターの弦数本を１つの指で押さえる
TAB譜:ギター楽譜についてる、運指を示したもの
1st:主旋律担当
2nd:副主旋律担当、装飾系
3rd:コードによる演奏担当
4th:基本低音ベースと低音主旋、Aさんの好むパート
またその都度、ギターで使ってる用語は軽く説明出しますね！
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作者名：みあ | 作成日時：2017年7月15日 8時
