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2話 ページ4

学部のオリエンテーションも無事終わり、ようやく学校生活に慣れ始めた4月中旬。久々にギターケースを背負い、私はバス停へゆっくり歩く。みつは、用事があると言って先に学校に行ってしまったし。

「うぁー…久々に触れられる…1年もまともに触れなかったもんなぁ…ごめんねぇ(ゆえ)さん。」

ケースを撫で、私はバスの窓から見える景色をぼんやりと眺める。入学式から色々あったけれど、幸いにも赤司くんたちには会わなかった。それがなんだか、寂しいようにも思うが。きっと寂しいというのは気のせいだろう。

「次は、大学前〜大学前〜。」
「あっ…降りなきゃ。」

ピンポーン

降車ボタンを押し、私はカバンを肩にかけてギターケースを持ちながら席から離れる。今日からは、講義が終わってからの練習に私も参加することになっている。私とみつは、今度の定期演奏会に二重奏で参加しないといけないからだ。1年も満足に触れていないから正直参加したくないけどね。

プシュー

空気の抜ける音と共に扉が少しガタつきながらも開く。すごい音が聞こえてくるのは昔からなわけだし、何も聞こえていないことにしよう。そう考え、何事もないかのようにバスから降り、先にサークル棟へと足を進める。ギターケースを部室に置いてからでないと今日の講義も受けにくいし。

「んー…おはようございます。」

ナンバーロックのチェーンを外して、静かにドアを開ける。たまーにこの部室で寝てる先輩(と書いてもだいたい馬鹿って読む人ばかりだけど)がいるのだ。

「おぉ、今日は寝てる人いない、少し弾いてこ。」

楽譜集をあさり、適当に弾いたことある曲のTAB譜を広げる。心なしか、とてもわくわくしている自分がいるとは自覚している。久々に思いきり弾けるのが嬉しいんだろう、案外と。譜面台と足台を椅子の前にセットし、ケースのジッパーに触れる。

「放課後の音楽室…か。久々に弾くんだし、大丈夫かな。きっとセーハはミスるけどいいや…。」

苦笑しながら楽譜を見つつ、私はギターを取り出し、構える。足台に左足を置く感覚が久しぶりすぎてゾクゾクしてくる。これが、私がずっとしたかった姿勢なのだと身体が訴えてくる。

「ふー……」

息を全て吐き出しながら、目を閉じる。すぅっと息を軽く吸い込み、私はギターの弦を押し込み(はじ)く。私のギターが奏でる音は、全てがよろしい音ではないが、それでも久々の本気の演奏に心はずっと踊っていた。

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作者名:みあ | 作成日時:2017年7月15日 8時

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