96.私だけでも ページ25
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屋内練習場の裏、
その小さな段差。
そこに座りこんで御幸を待っていた。
1人にはなりたくないけど、
誰かと一緒にいるのも今は嫌だった。
さっさと帰って早く寝るべきなんだろうけど、
姉ちゃんからも『お疲れ様。ゆっくり帰っておいで』
と、一言メールが来ていたし、
今日だけは、なんとなく
『先に帰るよ、大丈夫』と言えず。
言いたくなくて、
言っちゃいけない気がして……
A「(あいつ、泣かなかったな)」
御幸は試合終了から一度も涙を流していない。
あの気の強い亮さんですら涙を流していたのに。
恐らく皆食事を摂っているんだろうけど
私もその場にいるべきなのだろうが、
耐えたものが全て水の泡になりそうで
その場にいることが出来なかった。
すすり泣きがあちこちから聞こえる。
悔しかった。
実際私も泣きそうだったわけだし、
めちゃくちゃ堪えてたわけだし、
でもそれは、選手…さらに言えば3年生が1番感じていることで、
残された私、2年生、しかもマネージャー
途中入部の中途半端な女。
こんな私が涙を流すことは許されない。
そんなもの、3年生にとってはこの上ない皮肉になってしまう。
そう感じてしまった。
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ああ、泣くな。
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涙がでそうなわけでもないのに、すごく泣きそうで。
静かに膝に顔を埋めた。
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御幸「A」
膝に顔を埋めたまま、どれくらいの時間が経ったんだろう、
聞き慣れた優しい声で名前を呼ばれて
ゆっくり顔を上げるといつもと同じ表情の御幸がいた。
御幸「帰ろ」
とポッケに手を突っ込んで、若干腰を曲げてこちらを覗き込んでいた。
その優しげな、でもどこか悲しそうな表情に
やっぱり悔しいんだと思って、
A「……やばい。」
お願い
そんな顔しないで。
涙が落ちてきそうになっちゃう。
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「やばい」と、意味のわからないことをしか言ってないのに
全然立ち上がらない私に彼は何かを察してくれて
御幸「場所、変えよう」
とあいつは私の右手を引き、
寮を出て歩き出した。
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ゆかり(プロフ) - 汐音2号機さん» こちらこそよろしくお願いします (2020年7月21日 22時) (レス) id: 9654438337 (このIDを非表示/違反報告)
汐音2号機(プロフ) - ゆかりさん» ありがとうございます!これからも順に投稿していくので、何卒よろしくお願いします:-) (2020年7月21日 19時) (レス) id: e21875e94a (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり(プロフ) - はじめまして!展開が気になります! (2020年7月18日 10時) (レス) id: 9654438337 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:汐音2号機 | 作成日時:2020年6月27日 3時