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瑠璃色の桜篇/差し伸ばされたその右手 ページ36

その優しい声と表情に、涙が止まらなくなる。


銀時は困ったような顔をしてから、私の後頭部に手をまわしてそっと引き寄せてきた。




「涙なんて全部流しちまえ。後に引きずらないように、我慢しなくていいように」




優しい声が上から聞こえる。




着流しが私の所為で濡れているのに、全く気にしていない様子で、彼は私が落ち着くまで待ってくれた。








「……で」




暫くして涙が収まった頃、私と銀時は階段に並んで座っていた。


銀時が、そう口火を切る。




「何があったんだ?」




真っ直ぐに見てくる視線から逃げるように、私は顔を前に向ける。


夕焼けが、西の空を茜色に染めていた。




「昨日ね、父上に言われたの」




お見合いの事は、言わない事にした。


何となく、彼に知られたくなかった。




「もう松下村塾には行くな、って」


「……何でだよ」


「悪い噂が流れてるからだって。あの人、本質よりも外聞を気にする人だから」




吐き捨てるように言う。


父上も母上も昔からそうで、私はそれを、くだらない、と思っていたから。




「四葉はどうしてーんだ」




苦々しい気持ちで過去にあったアレコレを思い返していると、銀時にそう訊かれた。


グッと拳を握って、夕焼けから目を逸らす。


彼を真っ直ぐ見た。




「私はまた行きたい。松下村塾(あそこ)が、大好きだから」




昨日怒られてから、必死で諦めようとした。


嫌いになろうとした。




それでもそんな事出来なくて、代わりに今までの思い出が脳裏を巡ってきて、益々行きたくなった。




「そうか」




銀時はそれだけ言うと、勢いよく立ち上がった。




「じゃあ行くぞ」


「どこに?」




首を傾げると、彼はヤンチャな笑顔を浮かべて私に手を差し出す。




「お前んち」

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ゆず(プロフ) - ももさん» はい、頑張ります! (2020年4月17日 14時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - ゆずさん» 全然、大丈夫です!これからも頑張ってください!応援してます! (2020年4月17日 11時) (レス) id: 3ad4efd6ac (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - ももさん» 教えてくださって本当にありがとうございます! 直しました。ちょっと台無しですね・・・、本当にありがとうございます。 (2020年4月17日 10時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 突然失礼します。ページ39の四葉が過去を振り返り終わった2文目、恐らく「銀時に惚れた」と書きたかったのでしょうが、「銀魂に惚れた」になってますよ。 (2020年4月17日 0時) (レス) id: 3ad4efd6ac (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - ゆいさん» ありがとうございます! 思っていた以上に四葉が皆さんに好かれていて本当に嬉しいです。期待に応えられるよう頑張ります! (2020年4月15日 19時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆず | 作成日時:2020年3月21日 18時

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