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瑠璃色の桜篇/優しい ページ35

ぼやけた視界の向こう、銀時がギョッとしたように目を瞠ったのが分かった。


泣いているのを見られたくなくて、歩くスピードを上げて彼から離れようとすれば、「おい」と腕を掴まれてそれも出来ない。




「……何」




顔を見ないで言う。


嫌だな、涙声だ。




「ちょっと来い」




銀時はそう言って、私の腕を引っ張っていく。


振り払いたくても力が強くて無理で、私は結局彼の後を大人しくついて行くしかなかった。




着いたのは、人気(ひとけ)の無い神社だった。


やっと私の腕を離すと、銀時は真っ直ぐな目で私をジッと見る。




「何があったんだよ」




また、そう訊いてきた。




「何も無いって言ってるでしょ」


「そんなワケねーだろ」


「何も無いって。しつこい」


「じゃあ何で泣いてんだ!」




怒鳴られて、思わずビクッと肩を揺らす。


ハッとしたような顔で「悪りぃ」と謝られたけれど、きっと悪いのは銀時じゃない。




私が何も言わずにいると、銀時がその天パをクシャクシャッと掻きながら口を開いた。




「お前、何でそんなに意固地になってんだ?」


「意固地になんて……」


「なってんじゃねェか。だって明らかに何かあっただろ、お前。なのに『何も無い』って……」




怒ってるような顔でも、悲しそうな表情でもなかった。


ただ純粋に、心配してくれているのが分かるような表情で、銀時は一歩私に向けて踏み出した。




ポンと私の頭に手を乗せて、その行動の意味が分からずに目線を上げた私に優しく笑う。まるで、松陽先生みたいに。




「言ってみろ。楽になるから」




何でこんなに優しいんだろう、と思った。

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ゆず(プロフ) - ももさん» はい、頑張ります! (2020年4月17日 14時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - ゆずさん» 全然、大丈夫です!これからも頑張ってください!応援してます! (2020年4月17日 11時) (レス) id: 3ad4efd6ac (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - ももさん» 教えてくださって本当にありがとうございます! 直しました。ちょっと台無しですね・・・、本当にありがとうございます。 (2020年4月17日 10時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 突然失礼します。ページ39の四葉が過去を振り返り終わった2文目、恐らく「銀時に惚れた」と書きたかったのでしょうが、「銀魂に惚れた」になってますよ。 (2020年4月17日 0時) (レス) id: 3ad4efd6ac (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - ゆいさん» ありがとうございます! 思っていた以上に四葉が皆さんに好かれていて本当に嬉しいです。期待に応えられるよう頑張ります! (2020年4月15日 19時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆず | 作成日時:2020年3月21日 18時

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