瑠璃色の桜篇/最後の桜 ページ21
『あと何回桜を見られるか』?
どういう意味か分からなくて首を傾げると、お姉ちゃんは窓の外に視線を向けた。
そこには、満開に咲き誇った桜がある。
「きっと、これが最後の桜ね」
そう呟くように言われた言葉に、嫌な予感がした。
そして、私の嫌な予感は外れない。なんせ未来が視えるお姉ちゃんのおまじないだから。
それでも私は口を開く。
絶対に外れない嫌な予感を、認めたくなくて。
「……どういう事?」
お姉ちゃんは私を見ると、瑠璃色の瞳を細めて笑う。
優しいけど、悲しい笑顔。
いつの間にか私は、三日月型の髪留めに触れていた。
「そのままの意味よ。私が桜を見られるのは、今年が最後なの」
「何で? 桜は咲くよ。春になったら、毎年毎年」
「でも今年が最後なの、私が見られるのは」
嫌な予感が、少しずつ確信に変わっていく。
それと同時に、指が震えていく。
そしてお姉ちゃんは、私が必死で気付かない振りをしていた仮説を、事実として口にした。
「私ね、死ぬの。遅くても、次の春が来る前に」
…………何で?
認めたくない、意味が分からない、嫌だ、どうして。
「何で!?」
隣に座るお姉ちゃんに縋りつく。
否定してほしくて、冗談だよ、って言ってほしくて。
それでもお姉ちゃんは、優しく私の頭を撫でて淡く笑う。
「何で、って言われても……そういう家だから、としか言いようがないかな。私の生まれた笠井家はね、昔からそうなの。笠井家に生まれた女の子は、未来が視える力を持つ代わりに短命でね。大抵25歳を越えたら……。絶対30歳にはなれないの」
お姉ちゃんは私と9つ違う。
って事は、今彼女は27歳だ。
「25歳なんて、16歳にしてみたらだいぶ先でしょう。だから、それまでには銀時が迎えに来てくれるんじゃないか、って、勝手に考えてたの。でも結局来てくれなくて、いつの間にか11年が過ぎてた」
馬鹿みたいでしょ、とお姉ちゃんが戯けたように言う。
でもその顔は、ちっとも上手に笑えていない。
「25歳になって、自分の未来を視てみたの。そしたら私、27歳で死んでた」
つまりね、Aちゃん。
「私はもう、いつ死ぬか分からないの。だから貴女達の所へは戻らない。段々弱っていって死んでいく姿なんて、貴女達に見られたくないもの」
どちらのものか分からない雫が、ポタリとまた、床に落ちた。
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ゆず(プロフ) - ももさん» はい、頑張ります! (2020年4月17日 14時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - ゆずさん» 全然、大丈夫です!これからも頑張ってください!応援してます! (2020年4月17日 11時) (レス) id: 3ad4efd6ac (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - ももさん» 教えてくださって本当にありがとうございます! 直しました。ちょっと台無しですね・・・、本当にありがとうございます。 (2020年4月17日 10時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 突然失礼します。ページ39の四葉が過去を振り返り終わった2文目、恐らく「銀時に惚れた」と書きたかったのでしょうが、「銀魂に惚れた」になってますよ。 (2020年4月17日 0時) (レス) id: 3ad4efd6ac (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - ゆいさん» ありがとうございます! 思っていた以上に四葉が皆さんに好かれていて本当に嬉しいです。期待に応えられるよう頑張ります! (2020年4月15日 19時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず | 作成日時:2020年3月21日 18時