わたの原

これが俗に言うデレというヤツ ページ48

「凄く面白かった！」


「良かったねぇ」


「ふわぁ……」




御所望の映画を観れてご機嫌の奏多に、ぶっちゃけ真選組(わたしたち)の方が派手な戦いしてるよなと思いつつ相槌を打つ。


その隣で総悟が大きな欠伸をした。コイツは映画の最中ずっと寝ていたのだ。




「総悟１２時間寝てたよね？ 何でまだ眠いの」


「俺が訊きてぇ」




何時間寝れば良いんだろう。


いっその事非番の日に１日中寝て寝溜めしたらどうだろうか。




「ねーちゃんもにーちゃんも、ありがとな」




私が悶々と考えていると、急に奏多が改まった口調でそう言った。


目を丸くする私と総悟を見上げて、笑顔になる。




「俺、今まであんまり外に出掛けたりとかさせてもらえなくてさ。街で団子買い食いしたのも動物園行ったのも映画館行ったのも、初めてだったんだ」




何となくそうだろうなとは思っていた。


何をするにしたって、この子は目をキラキラさせていたから。




「凄く楽しかった。だから、ありがとな」




……初日はあんなに捻くれてたクセに、急に素直になっちゃって。


思わず総悟と顔を見合わせる。




「うわ！？ な、何だよにーちゃん！」


「騒ぐな」




無表情を保ちながらも、総悟が急に奏多を持ち上げて肩車する。


急な浮遊感に声を上げた奏多に返す彼の声は、いつもより柔らかい。


面倒見が良いのか悪いのか分かんないな、コイツは。




まるで本当の親子……いや、それにしては歳が近いか。まるで本当の兄弟みたいなその様子に、私は頬を綻ばせた。

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