【東京喰種】銀扇

エトSide ページ27

気持ちの良い朝だ。




私、芳村エトはカーテンを開け街を眺めた。




肌寒いが空はすっかり晴れている。





私は本の山をひょこひょこと避けて
ソファーに座った。



机の上には、リフトのハサミがある。




そこで私は昨日の出会いを思い出す。






あの子…
確かAちゃんと言ったか。


どこかで聞いたことのある名だ。







彼女は噂通り頭からつま先まで真っ白で、
葡萄色の目をしていた…



というのは私の前の語り手が十二分に
説明してくれてるだろうから割愛しよう。






昨日は楽しかった。



思った以上に彼女は強いようだ。




しかし、彼女には闘い慣れている様子はない。



それなのに地味に手こずったのは、
きっと彼女のその闘い方にあるのだろう。







彼女の行った技の見切りや、
一本ずつ赫子を落としていくといった戦法は
本来は白鳩、つまりは喰種捜査官が
対喰種用に使うものだ。





一体何故？

彼女は何者だ？







それに彼女は追い詰められても
決して赫子を使おうとはしなかった。




エネルギー消費が早いのか？






それとも
開けたら種の分かってしまう吃驚箱のような、

特異だが穴のある赫子なのか？









喰種が赫子を使いたがらない原因は主にこの2つだ。





彼女はどっち？







考えれば考えるほど、
彼女の不自然な部分が見えてくる。






一体何が彼女をそこまで
歪めてしまったのだろうか。








きゃは。



きゃはは。



きゃはははは。









本当に面白いよ。






よし、賭けをしよう。







彼女がただの世間知らずな喰種なのか。



それとも彼女は異常な経歴を持っているのか。






勝ったら本5冊。



負けたら部屋の片付け。







部屋の片づけでは罰ゲームにならないと
思うだろうが、それは違う。





私の部屋は文字通り混沌としているので
片付けるには1ヶ月以上はかかるはずだからだ。









私は後者に賭けることにした。









これは完全に、そうだったらいいな〜という
願望である。









なんでそんなことを思うのか。





そんなのは簡単だ。









だって、




人の不幸は





蜜の味でしょ…？









九時になったらきっと塩野から

原稿の催促が来るだろう。


そして無言で電話を切る。









そうして毎朝、私は善良な“ヒト”に
化けているのだった。

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