本当に大事なもの ページ12
「……こっからは、私の意見なんだけどさ」
目の前のありふれた光景に目を細めて、口を開く。
「別に味方するワケじゃないけど、銀ちゃんだってね、神楽に幸せになってほしいのよ。絶対そう思ってる」
「でも……」
「うん。分かってる。じゃあ何で突き放したんだ、って事でしょ? きっと銀ちゃんは、それが最善だと思ったの」
私も銀ちゃんの立場ならこうしてると思う、と言った。
「皮肉なものだけどねぇ、本当に大事なものって、持っている人よりも持っていない人の方が知ってるものなの。だからよ」
「……どういう事ですか?」
「銀ちゃんね、孤児だったらしいの。だから親なんて見た事も無い。だから知ってるんだよ。親のありがたさも大切さも、そこらの人よりずっと。かく言う私もそうだからね、ここら辺の意見は経験談だから信頼してくれて構わないよ」
私がそう言えば、新八は少し申し訳なさそうな顔をする。
いいのいいの、と手を振って、私はまた笑った。
「良さを分かってるかどうかと、欲しいかどうかってのは別。元々居なければ、案外欲しいとは思わないのよ。良い人に育てられたのもあるんだろうけど。……まあ取り敢えずね、何が言いたいかっていうと、銀ちゃんをあんまり責めないでやってほしいって事」
あれ、これ結局かばってる? まあ良いか。
「たとえどんなに神楽が自分の所に居たがったって、親と居る方が良いに決まってる。折角親が連れ戻しに来てくれたんだから、一緒に行けば良い。そう思ったんだよ、きっと。でも銀ちゃん不器用だから。それを口に出せないの。だから突き放すみたいになったんだよ」
「そうなんですか……」
「うん。でもまあ、銀ちゃんが思う神楽の幸せと、神楽の本当の幸せが一致するワケじゃないからね。この結果に満足してないなら、新八が神楽を連れ戻しに行ってあげれば良い」
私は立ち上がると、彼に笑いかけた。
「親が居る人にしか分からない事も、あるだろうし」
新八の視線を感じながら私は、鼻歌を歌って公園を出て行った。
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ゆず(プロフ) - fubukiさん» ありがとうございます! これからもよろしくお願いします! (2021年2月22日 22時) (レス) id: d7263fa231 (このIDを非表示/違反報告)
fubuki(プロフ) - 題名が覚えている百人一首の句なのでとても嬉しくなりました!面白いです。 (2021年2月22日 21時) (レス) id: 8d00889b6b (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - グリみいさん» ありがとうございます!そう言っていただけて凄く嬉しいです。更新頑張りますので、これからもどうぞよろしくお願いします! (2019年9月4日 18時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
グリみい - 感動して泣けました!!凄くこのシリーズが大好きです!!応援してます! (2019年9月3日 22時) (レス) id: 460e4835e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず | 作成日時:2019年8月18日 10時