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春。晴れて高校生になった俺は真新しい制服に身を包みながら学園敷地内をさ迷っていた。

今年から俺が通い始めたこの“聖蘭学園”は幼稚園から大学までエスカレーター式で通うことができるいわゆるお坊ちゃん学校であり、俺のように一般の中学から受験を掻い潜って高校に入学してきたものは“外部生”と称され、元から聖蘭学園に通う生徒からやたらと注目を浴びることとなる。

外部からの受験で特待生として入学した俺も例にたがわず関心を集めていた。
何故そんなことがわかるのか、自意識過剰ではないのかと思う人もいるだろうが、これが事実だというのは俺がまだここに入学する前の三月末に次年度入学してくる外部生のプロフィール(どこから情報を仕入れたのかは全く検討もつかないが)が号外として出されていたり、俺が廊下を通る度に隅の方でこちらの様子を伺いながらひそひそ話をする者の多さが物語っている。

きっと内部生のお坊ちゃん方からすれば外部生で平々凡々な俺らなんて珍獣辺りと大差ないのだろう。実際今年の外部生は俺含めたったの九名であり、希少性は確かに高い。


――とまあ、そんなことはどうだっていいのだが、俺は今そこそこに困っていた。


「ここどこ……」


そう、迷子である。
いや俺が特段に道に迷いやすいとかそういうわけでは決してなく、単にこの学園の尋常じゃない広さがいけないのだ。高等部だけで三棟も校舎があって、正直今自分がどの棟にいるのかも把握出来ていない。

先述の通り外部性である俺は入学して一週間たった今でも学園側と交わさなければいけない書類のやり取りが残っている。
今日もその書類を届けに職員室を目指していたのだが、道すがら野良猫やら花やらに取られていたらあっという間に道に迷ってしまっていた。

腕時計で確認した現在の時刻は十七時十分。HRを終えて教室を出たのが十六時過ぎだから迷い始めてかれこれ約一時間経ったことになる。

窓から見える空は心なしかどんよりしてきた。そういえば今朝のニュースで今日は夕方から雨が降るとかなんとか言っていた気がする。ちなみに傘は持ってきていない。


とりあえず早いところ職員室を探し出してしまわなければ。
俺は人気のほとんどない校舎を再び歩き始めることにした。

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なつき - 作者さん、どしたん? (2019年8月1日 21時) (レス) id: e36f276856 (このIDを非表示/違反報告)
ペコ - めっちゃハマりました!最新頑張って下さい! (2019年7月18日 0時) (レス) id: d6a2adbe5a (このIDを非表示/違反報告)
さくら - 更新してええええ泣 (2019年7月17日 16時) (レス) id: fdd612b178 (このIDを非表示/違反報告)
あんあんあんこ - けしからん!もっとやれ!(サーセン) (2019年7月14日 22時) (レス) id: 57bf108e06 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 仙椿(せんつばき)さん» コメントありがとうございます!尊いだなんてそんな照れちゃいます( ¯///¯ ) 頑張ります、今後ともよろしくお願いします〜! (2019年6月30日 0時) (レス) id: 4a341f9b26 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2019年6月8日 22時

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