【歌い手】ようこそ、夜想曲サーカスへ。【CIRCUS】

story9. ページ10

『にしても、びすが人を誘うなんて珍しいね』

「まあ、Aさんに話したいことがあったんで」





びすは基本単独行動派。
別に群れるのを嫌っているわけではないようだけれど、
皆といる時間と同等に１人の時間も大切にしたい主義らしい。


だから自由時間は誰かに誘われさえしなければ、
大抵いつも１人でいるのに。


それも、よりによって私と話したいだなんて。
本当に珍しいこともあるもんだ。




『へぇ。何？』

「今週の観客についてです」




今週の観客？
たまに面倒だったり危ない人もいるかもしれないけど、
そんなのしょっちゅうある事だから大した問題ではないはず。
なら、一体何――――――――――？




「気を付けてくださいね」

『何が？』

「今回、結構面倒な奴が多いみたいです」



ああ、またこいつは。きっと独断で情報を仕入れたんだろう。
でなければ、そんなことが分かるはずもない。
前に一度それがバレて、ナノさんにこっぴどく叱られたってのに。
本当に懲りないやつ。




「今回は特に、女子供を売りさばく輩が重点的で……」

『で、私が心配だって？大丈夫だよ、それ位』

「だけど……Aさん、鹿乃と松下さんの次に弱いし、可愛いから心配なんです」



何気に鹿乃ちゃんと松下ちゃんも貶している気がする。
というか、貶すんだか褒めるんだかどっちかにして欲しい。
無闇に怒れなくなってしまうではないか。


まぁ一応、怒らないように話を続ける。




『でも、本当に接近するのなんて招待状出す時だけだよ？』

「それでも心配なんです!」




何か、いつもの感じと違うぞ。
いつものびすと言えば、私を小馬鹿にしたように話してくる微妙に癇に障るやつのはず。

そんなびすがここまで心配しているという事は、
それ程ヤバい人達なのだろうか。




『……分かったよ。警戒しておく』

「絶対ですよ？いいですね」




無駄に念を押してくるびすを、はいはい と適当にあしらってから話を切り替える。
一応今日、明日のうちは、護身用の銃でも持っておこうかな。

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