＊第6話 ページ7
最初は、ただの興味だった。
ゴミを拾っていたら、ぐずぐずと泣きながら歩いている少女を見つけた。ここらで見たことがない姿をしていたこと、服が綺麗であることから、今日捨てられたのだろうと察した。
ここに来たばかりの子供が生きる術を学べず死んでいく。そんなことは日常茶飯事だが、まぁ見つけたからには教えてやるかと声を掛けた。
少女は俺の存在に気づくと目を大きく見開いた。少々驚きすぎじゃないかと違和感を感じたが、状況に混乱でもしてるんだろうと納得し、俺達の拠点へと連れていった。
少女＿Aは、人一倍怖がりな性格をしていたが、意外にもすぐに仲間と打ち解けていった。ここまで臆病な人間が珍しいのか何なのか、つい構いたくなるのだとあいつらは言う。分からなくもない。
共に生活するにつれて、次第にAに興味を引かれるようになった。別に、恋をしただの惚れただのという馬鹿げた話ではない。
彼女は異質な存在だった。…いや、この街の外の世界からすれば、俺達が異質で彼女が正常なんだろう。しかし、俺達の中では彼女が浮いてみえた。
盗むことも殺すことも躊躇し、拒む。
盗むことはまだ許容したが、最初の1回目以降はやりたくなさそうな、なにかに怯えるような顔をしていた。言葉にはしなかったが。実際、盗むことができなかった。
殺すことの関してははっきり嫌だという意思を示す。やりたくない、と泣きそうな声で訴えてきた。その必死さに、今は許してやるかと俺達は見逃した。
どうせ、いつかはその日が来る。
盗みと殺しができない、これがAと俺達の分かりやすい違いだった。
他に違いを挙げるならば…我慢をすることが好きだという点だろうか。欲しくなったら奪おうとする俺達とは対照的だった。どれだけ腹を空かせても、彼女は大丈夫だと笑いながら周りを優先する。
ああそうだ、これが面白いのだ。
Aは"お腹がすいた"という欲を口に出すことは出来ても、その欲を満たすために行動することが出来ない。
彼女にあって、俺達にないもの＿倫理観、道徳観、常識＿そういったものが彼女を邪魔をしているのだと予想が付いた。
邪魔なものはさっさと捨ててしまえばいいのに、今日も盗みは失敗して空腹に耐えている。
さて、いつまでそれが続くだろうか？気になって仕方が無い。
そう、最初は。
異質な存在に向けた、ただの興味だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 737人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
推しの命は私の命 - 番外編だけでも書いてくれ (3月2日 21時) (
レス) id: be6e33eff1 (このIDを非表示/違反報告)
あいす - クロロがドロドロしていて凄い刺さりました,,😭めちゃ面白いです！！応援してます！！！！ (9月29日 13時) (レス) @page28 id: d200d8285a (このIDを非表示/違反報告)
ritsu(プロフ) - 次がすっごく楽しみです!!!頑張ってくださいね! (9月12日 23時) (レス) id: 09c2417c6f (このIDを非表示/違反報告)
みのる - 続きすごい楽しみです！！！待ってます！！！ (9月11日 23時) (レス) @page48 id: b8a09115f0 (このIDを非表示/違反報告)
伊波トウナ(プロフ) - めっちゃ面白いです！続き楽しみにしてます！ (5月3日 12時) (レス) @page48 id: ce08f5279c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ナキサ x他1人 | 作成日時：2021年8月27日 15時
