第5話 ページ6
「Aはさ、何が怖い?」
黒い瞳がじっと私を見つめる。
私はクロロのこの目が苦手だった。疚しいことなんてないのに何もかも見透かされているようで、体が上手く動かなくなって、目を逸らせない。
「死ぬことが怖いのか、痛みが怖いのか、」
黒い瞳は無感情に見えて、その奥で愉しいと言わんばかりにゆらゆらと揺れている。
「殺すことが怖いのか。これに関しては俺には理解できない」
『く、ろろ…』
「それとも、俺達が怖い?殺しも盗みも俺達の一部だ、納得は出来る」
一歩、クロロが近付く。私は後ろに下がろうとしたが、足が動かなかった。
「何が怖いのか俺に教えてよ、A。
…ああ、もしかして俺が怖い?」
黒い目は緩く弧を描いて笑っていた。そのままキスでも出来そうな距離に、ときめきなんてものはない。ただただ、生きた心地がしなかった。
「A」
『ぁ、や、…し、しらないぃっ』
「あ」
硬直していた体はようやく動き、クロロを押し退けて全速力で逃げ出す。食べかけのパンも押し付けて。クロロなら追いつけただろうが、追いかけては来なかった。
『マチ、マチぃ…っ!』
「は?A?なんかあった?」
「なんだぁ?どうした、嬢ちゃん」
逃げた先でゴミを換金している最中のマチを見つけ、思わず抱き着いた。換金してくれる店のおじさんも不思議そうな顔をしていたが、話す余裕はない。
間違いなくあれは、団長だった。盗賊団の頭だった。
"俺が怖い?"
という質問に応えるなら、
"マジでめちゃくちゃ怖いです"だ。
困惑するマチにくっついて、暫くわんわんと泣いていた。
「悪かった、からかい過ぎたよ」と、その言葉に見合わぬ笑顔で謝られ、この件は水に流すこととなった。
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推しの命は私の命 - 番外編だけでも書いてくれ (3月2日 21時) (レス) id: be6e33eff1 (このIDを非表示/違反報告)
あいす - クロロがドロドロしていて凄い刺さりました,,😭めちゃ面白いです!!応援してます!!!! (9月29日 13時) (レス) @page28 id: d200d8285a (このIDを非表示/違反報告)
ritsu(プロフ) - 次がすっごく楽しみです!!!頑張ってくださいね! (9月12日 23時) (レス) id: 09c2417c6f (このIDを非表示/違反報告)
みのる - 続きすごい楽しみです!!!待ってます!!! (9月11日 23時) (レス) @page48 id: b8a09115f0 (このIDを非表示/違反報告)
伊波トウナ(プロフ) - めっちゃ面白いです!続き楽しみにしてます! (2023年5月3日 12時) (レス) @page48 id: ce08f5279c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナキサ x他1人 | 作成日時:2021年8月27日 15時