10.二十七歳、同い年 ページ12
帰り道、Aと二人、肩を並べて歩いた。
「ヴィクトルさ、私のこと聞いたでしょ」
「何を？」
「とー君の父親のこととかさ」
図星を突かれて、思わず肩が跳ねた。
「……嗚呼、聞いた。勇利から。
ごめん。失礼だったよね」
「いや、仕方ないことだよ。
変な気使わせてたら、申し訳ないなー、と思ってさ」
隣で笑うAは、確かに気にしていないようだった。
彼女に聞きたかった言葉が、
喉から這い上がってきた。
「一つ、聞いていいかい？」
「何？」
「憎くないの？ その、旦那さんのこと」
たまたま道端にあったベンチに彼女は座り、
その隣をポンポンと叩いた。
どうやら、座れということらしい。
「……憎くないっていったら嘘になるよね。
実際、辛かったし、許せないと思ってる」
語るような優しい声音で話し出した彼女の
横顔を見つめる。
「彼、同じ音楽家なの。指揮者なんだけどね。
元々は優しい人だったんだよ。
でも、音楽の世界は厳しいから
上手くいかなくて、それで……」
過去に思いを巡らせる彼女に風が吹いて、
その髪を靡かせた。
「分かっちゃうんだよね。
人として許されない事だけど、
そこまで追い詰められる気持ちは。
音楽家なら、誰もが通る道。
彼はそれに耐えられなかっただけ」
「やっぱり、一度は愛した人だもの。
そう簡単に憎いなんて言えないよ」
どうして、そんな風に笑えるのだろうか。
辛い思いをしたのは君なのに。
彼女の微笑は、儚く慈しむようで、綺麗だと感じた。
触れてみたいと手を伸ばすが、止めた。
触れてしまえば、壊れてしまう程か弱いものだ、と。
「あ、勘違いしないで！
私は私で幸せだから。とー君のことでいっぱいいっぱいだし」
「……すごいね。何だか、大人だ」
「そりゃ、いい加減良い大人だもん」
二十七歳。
俺はただスケートに人生を捧げ、
ひたすらにスケートを追いかけた。
"一般的な生活"というものをかなぐり捨てて。
彼女は、辛い思いをしても乗り越え、
今を精一杯生き抜いている。
同い年、どちらも良い大人。
それでも、彼女と俺の間に大きな差を感じた。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています！更新停止状態のままですが更新はされるのでしょうか？ (2019年9月12日 21時) (
レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になってます！もう更新されないのでしょうか？ (2018年12月29日 21時) (レス) id: 6124a9987a (このIDを非表示/違反報告)
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