〇拾参〇 ページ14
台風のように現れ、朝霧のように消えた。
処理の追いつかない不思議の連続は、思っていたよりも精神を磨り減らしたらしい。未だ、黒いナニカのはためきが瞼の裏でちらついて、露月の脳内を乱している。
…夢の
────────……まだ奴が…?
そんな考えは、一瞬の内に吹き飛んだ。
時分は夜。いつの間にか【後宮】には静謐の
昼間には美しく笑っていた草花が顔を隠し、三線や琴の雅な音色も
ほのかな月明かりさえない今宵の後宮は、優美な女の園と言うには些か寂しすぎるだろうか。
だんだん夜目が効くようになり、もう一度目を凝らしてジュダルの影が無いことを確認する。全てを支配したと言わんばかりにこの場を牛耳っていた少年の気配は、もはや一滴の名残も無かった。
ここに存在していた事実さえ、抹消されたように。
それにまた、例えようのない恐怖を覚えるのだ。
「…そろそろ行かないと。」
大して意味の無いぼやきが自分の口から漏れた事に、露月自身が驚愕した。
幼い頃から存在自体を疎まれていた露月にとっては声を発することも相手の神経を逆撫でする要因でしかなく、いつしか、痛みにも恐ろしさにも黙って耐える術を会得していた。独り言が喉を通り過ぎることなんて、有り得なかった。はずだ。
そんな彼女が、今、変わった?……誰が、変えた?
正体の見えない胸騒ぎを紛らわすように、露月は一歩を踏み出す。
まだ、目的の場所は視認できない。
後宮の中庭を抜け、後宮で宴を行う時に使う大屋敷の裏道へ体を滑り込ませる。“裏道” と言っても其所は、剪定の手が及んでいない垣根と大屋敷の壁との間、約一
その先あるモノを穴場と言うか、隠れ家と言うか。
きっと最も相応しいのは……
秘密基地。
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√ルート(プロフ) - 亜純さん» コメントありがとうございます!私の文章力が拙いせいでお待たせしてしまい申し訳ありません。こだわりが強すぎてどうも筆が進まなくて.....不定期更新は続きますが、少しでも皆様も期待に添えるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします!! (2018年7月31日 12時) (レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
亜純(プロフ) - 続きが気になります!更新頑張ってください! (2018年7月31日 0時) (レス) id: 430739def7 (このIDを非表示/違反報告)
√ルート(プロフ) - 返信が遅くなってしまい、誠に失礼致しました。まだまだ稚拙な文章しか書けない私には、勿体無いご感想です。本当にありがとうございます!!主人公の美しい一面も、裏を覗けば苦悩や窮愁に埋め尽くされている。主人公の濃密な人生を、皆様に楽しんで頂ければ幸いです。 (2018年5月27日 16時) (レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
Seere(プロフ) - 一語一句が本当に綺麗で、琴線に触れるものがある文章ですね。主人公の凛とした美しさに儚さを感じます。これから後宮でどんな活躍を見せるのか楽しみです。応援しております(^^) (2018年5月26日 21時) (レス) id: 602f4a06eb (このIDを非表示/違反報告)
√ルート(プロフ) - 麻侑さん» ありがとうございますっっ!比喩表現には特にこだわっているので、褒めていただけて嬉しいです!!嬉しすぎて変な笑いが込み上げてきそう(クエヘヘヘヘヘッヘ←不定期更新ですが見守って頂けると有難いです。 (2018年5月19日 10時) (レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:√ルート | 作成日時:2018年5月18日 0時