アソビゴコロ３【川村壱馬】

過去の傷 ページ30

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『ねむ…い、』


壱｢おい、そこで寝んじゃねぇ。今日は風呂入れ｣


『ん〜…』


壱｢あと5秒以内に起き上がんないと俺が脱がすから。ごー、よーん、｣


『…！！』


壱｢…つまんな｣






れんとくんとバイバイしてから
思いっきりはしゃいで遊んで
4人で夜ご飯食べて
電車もずっとおしゃべりして
吉野先輩と岩谷先輩とバイバイして
壱馬先輩の家に来た

そしたら急に睡魔が襲ってきて
ソファにダイブ

…壱馬先輩のお家なのに
少し慣れてきてしまった自分がこわい

壱馬先輩の言葉に慌てて起き上がって
お風呂場に向かった
きっと壱馬先輩もすぐ入りたいよね、って思って
急いで体を洗ってお風呂を出る






壱｢もうあがったん？｣


『壱馬先輩も早く入りたいかと思って…』


壱｢別によかったのに｣






ソファに座りながら携帯をいじる壱馬先輩
…これだけで絵になる
ほんとに、ほんとにほんとにかっこいい

壱馬先輩のことずっと見てたら
ふと目が合って ん？ って優しい声

一気に体が熱くなって
ううん と首を振って
壱馬先輩に借りたTシャツの裾、謎に引っ張った






壱｢…そういえばさ｣


『はい』


壱｢今日、なんで泣いてたん？｣


『親子の再会に感動して…』


壱｢違う、その前｣


『…あれ、は』






壱馬先輩の言葉が切なくて
いつの間にか涙が滲んでた

たくさん言葉を交わす前に
自分の前から姿を消した両親
きっと壱馬先輩は
れんとくんに自分の過去を見た

だからあんなこと言ったんだ
絶対愛されてるから、って

壱馬先輩の気持ち考えたら
勝手に苦しくなって泣きそうになっちゃった






壱｢…お前のことだから変なこと考えてんだろうなって思ったけど｣


『変なことなんて、』


壱｢…れんとは、愛されてたな｣


『壱馬せん、』


壱｢母親も、れんとも…笑ってた｣






携帯から目を離した壱馬先輩はどこか遠くを見てた
笑ってるのに、笑ってない

壱馬先輩の過去の傷は…消えないのかな
こうやっていつまでも壱馬先輩を縛り続けるのかな

そんなの…やだよ
わたしがその傷、癒してあげられたらいいのに
わたしは…何ができるんだろう






壱｢…A？｣






遠い目をする壱馬先輩にそっと近づいて
ラグに座って投げ出されていた手を握った

不思議そうにわたしを呼ぶ壱馬先輩を見上げて微笑んだ




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