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 「兄は……?」

 「みけじまですか?ここはんとしくらい、こえもきいてませんけど……?」

 おかしい。Aは思った。
 そんなことはあり得ない。あってはならない。この地において、「かみさま」として信仰され保護されてきた深海家の当主が傷を受ける事態になっていいはずがない。少なくとも身代わりなどになるべき存在があるはずだ。奏汰であれば、Aの兄こと三毛縞斑がその役目にあたるし、奏汰の傍を離れるなら代わりがたてられるはずだ。
 なのに奏汰の今の状況がこれだ。

 「……」

 「A?」

 「……へぁ?あ、はい、何でしょう?」

 急に奏汰から声をかけられて、Aは狼狽えた。

 「『いたそう』なかおをしていますね。どこかいたむんですか?」

 「……痛いのは、奏汰さんの方なんじゃないですか」

 「……」

 Aがそう返すと、奏汰は黙ってしまった。そのままAは何も言わず、手当てを進めた。絆創膏の類は何も持っていないので、ひとまず消毒されたさらしを当てておく。

 「……おなじことを」

 奏汰が次に口を開いたのは、随分経ってからだった。その頃には手当ては大方済み、Aは消毒綿を捨てたビニール袋の口を縛っていた。

 「おなじことを、ちあきにもいわれました」

 ちあき。その名前は相当久しぶりに聞く。

 「ずっとさがしているんです。あのこは、ぼくがわからないことをたくさんおしえてくれたから、いまもきっときいたらたくさんこたえてくれるとおもって。だからさがしてるんですけど、ぜんぜんあえないんです。ぼくは、きらわれてしまったんでしょうか」

 その横顔は酷く寂しげだった。この人もこんな顔をするんだ、とAは思った。
 「ちあき」なる人物は、同じ学校に通っているはずだ。夢ノ咲学院にはアイドル科の他普通科などがあり、アイドル科だけが敷地が違うという。であれば、「ちあき」もアイドル科の生徒であるはずだ。校舎はそう大きくはないはずだから(後に、相当大きな校舎であると知るが……)、それでも会えないとなると、学年が違うために卒業してしまっているか、或いは向こうに避けられているかだろう。

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Chris(プロフ) - 冬枯さん» コメントありがとうございます。嬉しさで机殴りながら返信打ってます(だって初コメ……初コメ……!!)。遅々として進まない筆で申し訳ありませんが、少しずつでも更新してまいりますので今後もお楽しみいただければ幸いです。 (2020年8月21日 20時) (レス) id: 313ba381d4 (このIDを非表示/違反報告)
冬枯(プロフ) - 楽しく読ませて頂いております!自分も友達から勧められ、新シリーズから始めた者です。流星の篝火は無理です。本当に無理。良い話すぎて泣きます。良さの反動と言えど、文を紡いでいくのはすごいと思います!これからも更新楽しみに待ってます! (2020年8月21日 19時) (レス) id: ec10afebdf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Chris | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/chrisinfo/  
作成日時:2020年6月13日 0時

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