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Case.69 ページ35

向き合っていたパソコンの画面がふと見えづらくなって、眼鏡の下から目を押さえる。
まずい、また目がかすんできたか。
しかし、原因は光の反射だった。窓の外が、いつの間にか白み始めている。

「風見さん…あの、顔色酷いですよ…?」
「少し寝た方が…」
「たまに目の焦点合ってないですし…」
「そうか…だが、もう少しでキリがつくからな…」

どうやら今の自分はだいぶ酷い顔をしているらしい。部下達が言うのももっともだが、その彼らも負けず劣らず幽鬼のような顔なのでまったく響かない。

「お前達も昨日から働きづめだろう。先に仮眠室に行ってこい」
「わぁい…いいんですか…じゃあそうさせてもらいます…」
「やったぁ…」
「俺も…」
「俺も行く…」
「お先に失礼します…」

そう言って、事務所にいた幽鬼はぞろぞろと列を成して仮眠室へ消えていった。2時間もすれば、少しは生気を帯びた顔に戻れるだろう。

「ふー……」

がらんとした事務所を見回して、背もたれにもたれかかる。
公安の事務所に缶詰めになって3日目。

机の端を占領している眠気覚ましや栄養ドリンクの空き瓶が、この過酷な状況を静かに物語っている。
これは降谷さんには見せられないな…。
食事と睡眠はしっかり摂れと再三言われている。見つかったらまた怒られてしまうからな――。

「風見、いるか?」
「ふ、降谷さん!?お疲れ様です!」

突然入口から現れたその姿に、体が条件反射で立ち上がる。
噂をすれば…いや、それよりも。

「どうしてこちらに…。今日は登庁の予定はなかったかと…」
「そのつもりだったんだが、君が根を詰めていると聞いてね」
「そうでしたか…」

片手で座るよう促され、着席してうなだれた。
最悪だ。忙しい降谷さんに余計な手間をかけさせてしまうなんて。
後悔して、後悔ついでに思い出した。

あ、空き瓶!

気づいた時にはもう遅い。降谷さんの目は、すでに机に置かれた大量の証拠品をとらえていた。

「ふ、降谷さん…これは…その…」

言い訳は通用しないと分かっているのに、どうしても口をついて出てしまう。

「まったく君は…」

ああ、怒られる…。
しかし予想に反して、聞こえてきたのは小言ではなかった。

「持ってきて正解だったよ」

そう言って、降谷さんは持っていたトートバッグからタッパーを取り出した。

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胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます。修正いたしました! (2022年8月2日 2時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 82話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年8月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます!修正いたしました。ご不便をおかけいたしました…! (2022年7月31日 17時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 66話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年7月31日 11時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - cherry*さん» こちらこそです!更新本当に遅いのですが、どうか最後までお付き合いください! (2022年5月27日 12時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月19日 5時

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