ぼくのために【はじめしゃちょー】rq ページ19
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2月14日。バレンタイン。
私を含めた彼氏がいる女子には
最高のイベントなんだと思う。
でも、私は本当に嫌だ。
料理が苦手だから。
苦手だけどなんとか頑張ろうって思って
何回か簡単な物を試しに作ってみたけど。
ここまで自分がひどいと思わなかった。
ひとつも上手くできない。
あ、いや、ひとつ上手くできたかな。
生チョコってやつ。
チョコと生クリームを混ぜるだけのやつ。
アレをあげようと思って準備を始める。
「…よし。」
2文字、呟いて、
まずは生クリームを沸騰させる。
換気扇回して、60ml入れる。
「あれ、」
開け口逆だ。
「…ハァ。」
上手く開けられなくてドボドボ零れてく。
「わわっ!」
その時、
ガチャン!と大きな音を立ててお鍋が落ちてきた。
足の指に!!
「いったぁ!!」
ここでガチャ、ドアの開く音。
「お邪魔します〜」
え、まってタイミング悪すぎ…。
こんなとこ見られたくない。
そんな私の思いをよそに、
はじめくんの足音は近付いてくる。
「A?」
「は、じめくん…。いらっしゃい…」
「あーあ…これどうしたの?」
恥ずかしくて、顔を背ける。
言葉が出なくて。
「チョコ、作ってくれようとしたの?」
「えっ」
顔を上げると、
はじめくんは柔らかい表情で笑ってた。
「料理出来ないぐらいドジなくせに。」
「うるさい」
「あのさ、めっちゃかわいい」
「…」
「だってさ、
俺のためにこんなドジしてくれたんでしょ?」
違うって言えないから悔しいんだ。
「ほんとかわいいよ、A」
うるさい、なぁ。
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作成日時:2019年3月20日 22時