一松がリンチにあいました。 (ページ1)

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一松がリンチにあいました。ページ1

「いちまっちゃん､銭湯行くよー！」

一階からおそ松兄さんの声が聞こえる。
おれは脇腹を擦りながら一階に降りた。

「あれ？一松､風呂の準備は？」

「…おれ､今日銭湯行かない…｡」

「え？何かあったの？一松兄さん｡」

トド松は心配そうにおれを見つめた。
おれは頭を掻きながら我ながら無愛想に言った。

「…別に､傷があって風呂に入れないだけ…｡」

どうせ問い詰められるだろうから素直に理由を言った。

「え？猫に引っ掻かれたの？」

「…うん、まあそう…」

嘘をつくのは得意だ。でも今回ばかりは友達に罪をなすりつけるようで、歯切れが悪くなった。

「歯切れが悪いけど､どうしたの？」

「…別に…何でもない…」

「正直n…」

チョロ松兄さんが俺を問い詰めようとしたところを、おそ松兄さんが手で制した｡

「…分かった。俺ら銭湯行ってくるから、濡れたタオルで体拭いとけよー。」

汗かいただろ？と言って､いつもの笑顔で笑った。
頷いたおれを見てから

「ほら、お前ら行くぞー。」

と言いながら、おそ松兄さんは不満げなチョロ松兄さん達を連れて銭湯に向かった｡
おそ松兄さんはやっぱり優しい。
夕方もボロボロで帰ってきたおれを何も言わずに『おかえり』とだけ言ってあとは放っておいてくれた。
こうゆう所はやっぱり『長男』らしいと思う。
でもきっと、帰ってきたら聞かれる。
多分、知らばくっれても無駄だろう。
おそ松兄さんや十四松は兄弟の中でもずば抜けて察しがいい。
皆に心配かけたくないんだけど…｡

そんなことを考えながら俺はお湯に浸したタオルで身体を拭いた。