１２０ ページ40
手を繋ぎながら散策しても、あるのは点々としている別荘らしき建物と木々だけ。
この地域は観光地と言うか、リゾート地で確か美術館とか、ミュージアムとかあった気がするけど翔さんの目的はそれじゃなく、本当にただのお散歩なのかと思い、車一台分くらいの細い自然豊かな道を歩く。
そんな自然の中をお散歩中、ぽつんと建っていた古い建物の前で足を止めた翔さん。
「翔さん？」
「入ろうか？」
ギィッとなった所々錆びた鉄の柵を押して敷地内に踏み入れる。
「翔さん？勝手に入って大丈夫ですか？」
こんな古い建物でも持ち主さんがいるだろうし…。
だけど私の言った事に返事はせずに、私の手を引いたまま庭園を抜けて建物のドアを開けた。
ドアが開いた先には、真正面の壁に大きな十字架がかけられていて、その前には小さな祭壇。
「翔さん…？」
戸惑を隠せない声で翔さんを呼ぶけど、やっぱり返事をしてくれずに祭壇の前まで手を引かれながら歩いた。
祭壇から見て一番前の長椅子に置かれていた花束に手を伸ばして大事そうに私の手を握ってない手で抱き抱え…
祭壇の前に並んで立つと、翔さんが身体ごとこちらを向くから私も向かい合うように身体を向けた。
私を見てる翔さんの目は優しくて、ここに来た意図を探るようにその目を見るけど何も答えは見つからず…。
「二宮Aさん？」
「はい…。」
「僕…櫻井翔と一生共に生きてください。」
そう言って抱えた赤いバラの花束を私に差し出した。
震える両手を恐る恐る差し出すと、そっとその大きな花束が乗せられて…
「１０８本のバラの花束。」
「え？」
バラから翔さんに視線を移すと、翔さんは柔らかく微笑み…
「バラの花束には送る本数で意味があるんだ。」
「…え？」
「１０８本は…『結婚してください』。」
優しい笑顔…
でも照れたようにはにかんだ翔さんを見て目頭が熱くなって…
ついに涙の膜で翔さんの顔が見えなくなった。
だけど…
安心できるその優しい香りと体温を身近で感じて…。
「本当は９９９本がよかったんだけどな…。さすがに無理だったわ。」
「たとえ１本でも嬉しい…。」
バラが嬉しいんじゃなくて、贈ってくれた翔さんの気持ちが途轍もなく嬉しいの…。
１０８本のバラを抱えてホテルに帰り…
翔さんがお風呂に入ってる間にこっそりとスマホで調べた９９９本の意味…
『何度生まれ変わってもあなたを愛する』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 452人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月17日 19時
