６６ 〜S〜 ページ26
Aを送り届けて、隣にAがいない一抹の寂しさを抱えて潤が運転する車で帰宅の途につく。
「潤？」
「はい？」
「明日はどこ行こうな？どっかいいところ知ってるか？」
「え？明日もお会いになるおつもりですか？」
驚いた口調でそう言い、バックミラー越しにチラリと俺を見た。
「あ？何、当たり前の事言ってんだよ。」
毎日会いたい。
できる事ならずっと一緒にいたい。
「だってよ？マジで可愛いんだよ…Aって。」
「はぁ…。」
「今度な？手作りの料理作ってくれんだと。」
「はぁ…そうですか…。」
「『翔さんの好きな物何ですか？練習しときます』って真っ赤な顔して言うんだよ。クッソ可愛くね？」
「…若。」
「それとな？華も教えて欲しいんだと。『翔さんに教わりたいです』だってよ。もうさ？華だけじゃなくいい事も悪い事も全部俺が教えてやるからな？って…。わかんだろ？お前も男ならわかるだろ？」
「…若様。」
「あぁ〜。マジで…どうしよう？潤？俺、どうしよう？」
「……何がですか？」
「ヤベェよ…マジで兄貴みたいに囲っちまいそうだ。つーかもういっその事一緒に住むか。あいつどうせ一日中家にいるだけだし、それなら俺のそばにいても問題ねぇだろ？」
「…。」
「あの兄貴と一緒に住んでる事がまず気に入らねぇ。」
何で俺よりも兄貴と執事の方が一緒にいる時間が長いんだよ。
「若。若にはお稽古などのお仕事がございます。毎日同時刻に通うのにどれだけ私が苦労したかおわかりですか？」
「そんなもん知らねぇよ。それがお前の仕事だろ？」
「はぁー。そうでした…そういうお方ですね。若様は。」
諦めたかの口調の潤は軽くスルーで明日からどんな風にAと付き合っていくのか…
こうしよう、あぁしようと期待に胸を膨らませる。
「なぁ…潤？」
「…。」
もはや返事もしない潤を気にする事もなく…
「あれだな…色々と準備は必要だよな？」
「…。」
「まずシーツを…いや、ベッドも布団も総取っ替えだ。」
加齢臭が気になる歳でもないけど、やっぱり真っ新なAには真っ新がいいだろう。
「若。その前にですね？」
「あ、でも最初は夜景の綺麗なホテルとかが女はいいのか？でもネットでは彼氏の部屋って書いてあったし…。」
あれこれ妄想する俺に『あぁ、もうお手上げ。勝手にして』って潤が呟いたのは聞こえなかった…。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2018年4月17日 18時
