閑話休題3-主と話した日- ページ32
その後妹も気を失って、俺は直ぐに父の元へ帰った。慈善活動に積極的な父は大先生達兄妹のことをよく知って探していたらしい。こんな所に居たのかと、驚きながらも馬車を手配して直ぐに連れ帰った。
それから数日、あいつらは目を覚まさなかった。何かの流行病かもしれないのでと、俺はもちろん部屋に入れさえせず、部屋から出てくる使用人に逐一2人の話を聞いていた。
ある日突然、兄妹たちのいる部屋から大きな音が鳴った。それと同時に使用人が困ったような声出しているのも聞こえた。直感的に兄妹に何かがあったとわかった俺は、部屋に向かい開かれたドアの先を確かめるために走った。その先にあったのは俺の記憶からかけ離れたような荒れ狂った客室と、近寄るなと叫びながらAを守るようにして立つ大先生の姿だった。
「なんの騒ぎだ？」
「あっ坊ちゃんダメです！こちらに来ては！！」
「お前もこいつらの仲間か。」
「落ち着け。仲間……というか、俺の家だ」
「なんのつもりや。」
なんのつもりも、俺は2人を助けていたのだからそんなこと言われる筋合いなんてなかったはずだが、混乱している子供からしたら諸悪の根源はまず俺になる。
手負いの獣が威嚇するように、息を荒らげて睨みつける大先生の後ろからおろおろとこちらを見つめてくるAと目が合った。俺が何となく困った顔でその目を見つめ返していると、先に動いたのはAだった。
『お兄ちゃん。あのひと、多分、助けてくれた人だよ？』
「Aちゃん……。」
『今までの人達、こんな優しくなかったよ。きっと、だいじょーぶだよ。もし今までと同じだったら、いつもの様にすればええよ。』
「はぁ……まぁ、せやな」
後ろに控えていた使用人も息を飲んだが、俺も子供ながらに驚いた。動揺したように見えていたあの少女は、逆に言えば兄しか信じられない状況にあった。言葉が、視線が全てがそれを物語っていた。今間違ったことを言えば、この2人から無傷で帰ることは許されないだろうと。
ふわり、 優しく笑いかけると、大切な妹を守るように抱きながらぺたりとその場に座り込んだ。
「落ち着いたようだな。」
「ふん、Aちゃんの言うこと聞いたっただけや。」
『ねぇ、金色のお兄ちゃんは、何を言いに来たの？』
「ちょ、Aちゃん。」
『何の用ですか？金色のお兄ちゃん。』
言葉と彼女の表情だけを見たとしたら、なんと愛くるしいことか。言葉こそ無邪気で、無害な顔でキョトンと見つめてくるが、実際放たれている雰囲気は普通のものでは無かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 770人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
零歌 - え、うますぎでしょ！？ 憧れます‼ 続き、待ってます、！ (2023年3月31日 6時) (
レス) @page36 id: 2cc0278ca8 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメル(プロフ) - 面白いところで終わってしまった…！！これからも、気長に作品更新を待っているので無理のないようにしてください！いつでも待ってますから！！！ (2022年8月17日 9時) (レス) @page36 id: 803f58ab86 (このIDを非表示/違反報告)
歴(プロフ) - 小雨さん» こんな更新停滞小説にコメントありがとうございます神作品などありがたいお言葉まで！！そのうちひょっこり現れたらまた楽しんでいただければと思います。 (2020年11月22日 17時) (レス) id: 957608dc41 (このIDを非表示/違反報告)
小雨 - 歴さん。こんにちは！いやー見た瞬間に神作品だと分かりました()更新無理しないでください！出来るときにフラッと帰ってきて下さいね！それまでのんびりと待っておきます！ (2020年11月9日 10時) (レス) id: 459de324fd (このIDを非表示/違反報告)
歴(プロフ) - めっぴぃーさん» こんな更新されてるかも分からん作品にありがたいコメントありがとうございます。のろのろ具合は変わるかわかりませんが、気長に待っていただければと思います。 (2019年1月5日 2時) (レス) id: 957608dc41 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：歴 | 作成日時：2017年8月15日 21時
