61.Childhood Friend ページ22
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夏目が如月を連れて来たのは、人の少ない校舎の階段だ。
この棟では書道部や写真部など、言ってしまえば地味目な部活の展示場所で、文化祭の騒がしさとは程遠い所だった。現に二人が階段に座っていても、すれ違う人は誰も居ない。
大分落ち着いてきた如月は、すんと鼻をすすって言った。
「すぐ感情的になるの、僕の悪い癖だよね」
「そうだな。おかげでここに来るまでどれだけ注目を浴びたか」
嫌味らしく言われると、如月はごめんごめんと笑ってみせた。しかしすぐに、はぁぁとため息をついて項垂れた。
「……かおるんに嫌われた……かもしれない……」
「……劇の最後のあれか」
「勿論そういう意味じゃないよ? かおるんのつけまつげが取れかかってて、お客さんに見えないように直す為にやったんだけど……そしたらかおるんの態度が急に余所余所しく……」
「それなら大丈夫だろう。きっと驚いただけだ」
「でもいつもだったら『さっきのは何ですか会長殴られたいんですか?』って冷めた目で僕を見ながら手をポキポキ鳴らす筈だよ!!」
「……普段からそういう態度を取られている自覚はあったんだな」
「どうしよう……かおるんには何かトラウマがあったり……?」
最早夏目の声など聞こえていないように、如月はぶつぶつと独り言を言い続ける。
ずっとそんな様子の如月に、夏目はまたため息をつき、一言言った。
「だったら、すぐに謝ってこい。それこそ、今まで散々お前に振り回されてきた柏木が、キス如きでお前を嫌うなんて今更過ぎる。きっと大丈夫だ」
すると如月は顔を上げて、目をぱちくりさせた。そして少しの間幼馴染みの顔を見つめると、すくっと立ち上がって言った。
「……それもそうだね! ありがとう、なっちゃん。僕行ってくる」
「ああ。くれぐれも謝り方を間違えないようにな」
わかってるよ、と如月は少し頬を膨らませてから、いつもの明るい笑顔を見せた。
階段を下りていくその姿を暫し見守ってから、夏目もやれやれというように腰を上げる。
やっぱりあいつに、暗い表情は似合わない。
すると遠ざかっていた走る足音が何故か近づいてきて、息を切らす如月が現れた。
「なっちゃん!! かおるんがどこに居るか知ってる!?」
「それぐらい自分で探せ!!!」
*
「いやーお疲れ! 劇の成功を祝して、……成功? まあいいや、カンパーイ!」
「「「イェーーイ」」」
一方生徒会室では、役員達が打ち上げをしていた。
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こめ(プロフ) - 蒼月さん» コメントありがとうございます!ひええ……勿体無いお言葉ありがとうございます:;(∩´_`∩);:とても展開も更新も遅いのですが、頑張ろうと思います…!! (2017年9月10日 22時) (レス) id: 68f211f4d4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月 - 文章が綺麗でとても読みやすかったです。BL?は初めて読んだのですが、文のおかげで内容に入り込みやすかったです。この作品がとても好きなので、これからも更新頑張ってください!待ってます! (2017年9月10日 21時) (レス) id: 7a41753020 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(プロフ) - カジャさん» いえ、ゴンドラの唄の命短し恋せよ少女を元にしました。 (2017年8月15日 22時) (レス) id: c081f3254b (このIDを非表示/違反報告)
カジャ - 夜は短し歩けよ乙女からタイトルとってますか? (2017年8月15日 17時) (レス) id: 6539cbd64d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/chiy1/
作成日時:2016年11月5日 12時