60.いつもと違う ページ21
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「……とまぁそういう訳ですよ。ほんと最後のあれ何だったんだろうな」
「見たかった……見たかったぁぁぁ……」
「ほらほら久彦くん飴ちゃんですよ〜だから床に蹲らないでお客さんが変な目で見てるよ〜〜いい子だからお願いね〜〜」
「仕事しぃやお前ら」
そんな騒がしい1-Aを、木南紗世が黙って出て行ったことにクラスメイトが気づくのは、大分後のこと。
*
話は変わり、劇が終わった後の舞台裏。柏木は如月に静かに問い掛けた。
「……会長、何ですか最後の」
「かおるんのつけまつげが取れてたんだよ! 見えないように直すにはああするしかないと思ってー」
てへっと如月はわざとふざけた態度を取る。
ああ、またかおるんに「馬鹿ですか?」とか言われちゃうなー、などと思っていた如月は、柏木の口から出た言葉に拍子抜けした。
「……そうですか」
柏木は何の感情も込めずにそう言うと、スタスタと体育館から出て行ってしまった。
その背中をぽかんと見ていた如月は、物凄い速さで夏目の元に行ったと思うと、夏目の両肩を掴んで、独り言のように小さい声で呟いた。
「……どうしよう……」
「? 何だ?」
「かおるんに嫌われたぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「お、おい、ここで騒ぐな五月蝿い!!」
「うわあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛んもう゛生きでげないい゛い゛い゛」
「少しは人の話を聞け!!! わかった、わかったから場所を移動するぞ」
急に大声を上げた如月に、周囲の人間のぎょっとした視線が集まる。夏目は自分に抱きついて子供のように泣き喚く如月を引き剥がし、生徒会室へと急いだ。
移動する間も通行人の目は二人に注がれていたが、我が道を突っ走る如月がそんな事を気にする筈も無く、しゃくりあげながら引きずられるその姿は、とてもステージ上のイケメンと同じ人物には見えなかったという。
*
「……落ち着いたか?」
そう問い掛けられると如月は、鼻声で「うん」と呟いた。その様子を見て、夏目はため息をこぼす。
二人はどういう訳か小学校の頃から今までずっと同じクラスで、良く言えば幼馴染み、悪く言えば腐れ縁だ。
十年以上一緒に居れば、嫌でも相手のことがわかるようになる。夏目は、如月は自分以外にも友達を沢山持っているが、こうなった時彼が頼れるのは自分しか居ないことをよくわかっていた。
「……お前が柏木に嫌われるなんて、今更過ぎる」
わざとそんな風に言えば如月は、確かにと静かに笑った。
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こめ(プロフ) - 蒼月さん» コメントありがとうございます!ひええ……勿体無いお言葉ありがとうございます:;(∩´_`∩);:とても展開も更新も遅いのですが、頑張ろうと思います…!! (2017年9月10日 22時) (レス) id: 68f211f4d4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月 - 文章が綺麗でとても読みやすかったです。BL?は初めて読んだのですが、文のおかげで内容に入り込みやすかったです。この作品がとても好きなので、これからも更新頑張ってください!待ってます! (2017年9月10日 21時) (レス) id: 7a41753020 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(プロフ) - カジャさん» いえ、ゴンドラの唄の命短し恋せよ少女を元にしました。 (2017年8月15日 22時) (レス) id: c081f3254b (このIDを非表示/違反報告)
カジャ - 夜は短し歩けよ乙女からタイトルとってますか? (2017年8月15日 17時) (レス) id: 6539cbd64d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/chiy1/
作成日時:2016年11月5日 12時