52.最大の敵は生徒会長 ページ13
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会長が手を振りながら舞台袖に戻っていくと、キャアアと甲高い声が上がった。その声を聞いて、木南を含めた全校生徒は、「今学校に女子が居る」「会長はちゃんとしていればイケメン」、という重大な二つの事実を思い出した。
「そうだ……会長普通にモテんじゃん……」
「女子全員会長に掻っ攫われるんじゃ……」
この文化祭を機会に彼女を作ろう、と意気込んでいた友人二人は、サッと顔を青くした。木南もそれを聞いて、動揺せずにはいられなかった。
もし、あの子が文化祭に来ていて会長に惚れたら?
そもそも、あんなに可愛いんだから既に彼氏が居るんじゃ?
ネガティブな考えは走り出すと止まらない。木南の頭の中はそんな妄想が渦巻いた。
*
文化祭なんて無ければ良いと思った。
その考えは今日に限ったことではなく、中学の時からずっとあった。
友達の居ない人間にとって、イベントは不愉快なものでしかなく、いつも通り授業を受けている方がよっぽどマシだ。
そんな考えの俺が、何故寮に篭っていないで校内を出歩いているかというと、 柏木の様子をちょっと見に行ってみようと思ったから。
……べ、別に、柏木のことが気になっている訳じゃない。今日まで毎日夕飯作ったんだから、その間の練習の成果を見ないと割に合わないし(まあ、料理の腕は結構上がったけど)、柏木の話に出てくる、生徒会長がどんな奴なのか知りたいってだけ。
俺は入学式をサボっているから、生徒会長がどんな奴なのか知らない。柏木の話を聞いてのイメージは、勉強のできる馬鹿、イケメン、でも残念……そんな感じだ。
柏木の会長の評価は酷い。大体いつも、会長がやらかしたとか、あの人は真の馬鹿だとか、そんな話ばかりで、先輩なのに全く尊敬している様子はない。
でも、そんな話ばかりするのに、俺には柏木が生徒会長を嫌っているようには見えない。 寧ろ生徒会長の話をしている時は、とても楽しそうで、そんな柏木を見ているのは凄く──面白くなかった。
……思い出したら気分が悪くなってきた。苦手な人混みも相まって、凄く帰りたい。体育館は満席みたいだし、本当に帰ろうか……。
そんなことを考えながら歩いていると、ある教室がとても静かなことに気づいた。後ろの扉から少し覗いてみると、大きなスクリーンが広げられていて、そこには閉まった緞帳が映し出されていた。
『──昔々あるところに、薫姫というそれは可愛らしいお姫様が居ました』
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こめ(プロフ) - 蒼月さん» コメントありがとうございます!ひええ……勿体無いお言葉ありがとうございます:;(∩´_`∩);:とても展開も更新も遅いのですが、頑張ろうと思います…!! (2017年9月10日 22時) (レス) id: 68f211f4d4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月 - 文章が綺麗でとても読みやすかったです。BL?は初めて読んだのですが、文のおかげで内容に入り込みやすかったです。この作品がとても好きなので、これからも更新頑張ってください!待ってます! (2017年9月10日 21時) (レス) id: 7a41753020 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(プロフ) - カジャさん» いえ、ゴンドラの唄の命短し恋せよ少女を元にしました。 (2017年8月15日 22時) (レス) id: c081f3254b (このIDを非表示/違反報告)
カジャ - 夜は短し歩けよ乙女からタイトルとってますか? (2017年8月15日 17時) (レス) id: 6539cbd64d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こめ | 作者ホームページ:http://nanos.jp/chiy1/
作成日時:2016年11月5日 12時