53.お披露目 ページ14
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『──昔々あるところに、薫姫というそれは可愛らしいお姫様が居ました』
スクリーンの両脇にあるスピーカーからナレーションが流れる。どうやらここは、体育館で行われているパフォーマンスのライブビューイング会場らしい。どれだけ大掛かりなんだと俺は驚きを隠せなかった。たかが文化祭の出し物なのに。
それよりさっきのナレーション、何か引っかかる。薫姫、とか言っていた。確か、柏木の下の名前は……。
スクリーンを見れば、緞帳が開かれたステージの真ん中に、椅子に座る白いドレスを着た長い黒髪がいた。後ろに絵や窓がついた背景セットまであり、結構凝っている。カメラがアップになる。メイクで作られたとはいえその人形のような顔立ちは、まさしく姫そのものだ。
｢え、これ本当に男？｣
｢彼女より可愛い｣
観客は戸惑いながらも、その｢姫｣の容姿に見入っていた。しかし、俺はズームされた姫の顔を見て確信した。
あれは、柏木だ。
＊
『薫姫は生まれつき口がきけず、お城で本を読んだりと静かに暮らしていました。そんな薫姫はお城で過ごす毎日を、退屈に感じていました』
ナレーションが劇を続けるが、観客はざわついたままだ。友人二人も初めて見る柏木の女装に、目を見開いた。
｢え、薫姫ってもしかして……柏木のこと？｣
｢マジか！ 超似合ってるし！｣
そう言って一人の友人はゲラゲラと笑うが、木南はとても笑えなかった。何故なら、柏木の女装した姿があの子にそっくりだったからだ。
もしあの子が女装した柏木だったとすると、不思議だった点全て納得がいく。
文化祭でもないのに女子が男子校に居たこと。何故か声を発さず、わざわざ紙とペンを使って会話したこと。女子のわりに結構力が強かったこと。
木南は、嘘だ、と頭の中で何度も唱えたが、心の底でそれはほぼ確信になっていた。
｢……どうすればいいんだ、俺｣
劇の内容は、まともに頭の中に入ってこなかった。
−−−−−−−−−−
舞台裏(ナレーター編)
｢『昔々あるところに、薫姫というそれは可愛らしいお姫様が居ました』｣
｢……｣
｢？ 柏木クン、どうかシタ？｣
｢あ、いや、永彦先輩って普通に喋れるんすね……｣
｢……エット｣
｢あああそういう意味じゃなくて！！ せ、先輩いつもカタカナ表示されそうな喋り方じゃないですか｣
｢え、ホント？ 初めて知ったーなんでダロ｣
(自覚無し……！？)
口癖って自分じゃヨクわからないヨネ。by永彦
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こめ(プロフ) - 蒼月さん» コメントありがとうございます！ひええ……勿体無いお言葉ありがとうございます:;(∩´＿`∩);:とても展開も更新も遅いのですが、頑張ろうと思います…！！ (2017年9月10日 22時) (
レス) id: 68f211f4d4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月 - 文章が綺麗でとても読みやすかったです。BL？は初めて読んだのですが、文のおかげで内容に入り込みやすかったです。この作品がとても好きなので、これからも更新頑張ってください！待ってます！ (2017年9月10日 21時) (レス) id: 7a41753020 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(プロフ) - カジャさん» いえ、ゴンドラの唄の命短し恋せよ少女を元にしました。 (2017年8月15日 22時) (レス) id: c081f3254b (このIDを非表示/違反報告)
カジャ - 夜は短し歩けよ乙女からタイトルとってますか？ (2017年8月15日 17時) (レス) id: 6539cbd64d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめ | 作者ホームページ：http://nanos.jp/chiy1/
作成日時：2016年11月5日 12時
