恵まれてたんだね ページ45
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your side
「こんなゲームおかしいだろ…っ」
感情任せに怒りを呟くイッペーくん。
残りの人数は7人、そのうちグループは3つ。
もう終わりも近いというのに限界を超えた彼は。
「ダイヤ」
あぁ、本当にこの人は人の気持ちが読めないな。
読めて無視しているのかもしれないけれど、だとしたら一番タチが悪い。
泣いているイッペーくんのマークを無慈悲に呟いたチシヤに、彼が当たり散らす。
「…っ、いつまで続くんだ…!」
立っていられなくて座り込み、もう無理だ、と零すイッペーくん。
人ってもっと綺麗なもんだと思ってた。
続けざまにそう言う彼に私はふと思う。
きっと汚れた部分を見てきていなかったんだろうな。
【ピアニストの貴方にしか価値がないくせに…!】
【そんだけ稼げるならなんで手放しちゃったの?】
沢山の言葉が甦り、キツく瞼を閉じる。
「恵まれてたんだね。」
魅力的な低いチシヤの声が響き、私は下を向いたまま瞳を開けた。
「でもさ、俺たちにとっての現実は目の前で起きている事だ。今は俺たち3人で教え合うしかないよ。…このゲームで生き残るには。」
鼻をすするイッペーくん。
まぁ、頑張ろう。
そう言いながら腰を落としたチシヤが私に手招きをする。
彼の元に近寄れば、何だか傷ついているイッペーくんに感情移入してしまって苦しくなった。
チシヤの言っていることは何一つ間違っていない。
間違っていないからこそ、苦しいんだ。
そんな正論で片付けられないほどのやり切れない気持ちを、なんと言葉に表してもしょうがないの一言で片付けられてしまう気がして。
「じゃあ…、お願い。」
イッペーくんに背を向けるチシヤ。
ふと私と混ざりあった視線で彼が訴える。
「こんな世界だからね」と。
…こんな世界だから…。
苦しいけど、どんな理不尽なゲームでも生き残ってやるしかない。
「……ハート」
震える声でイッペーくんが言ったのを、チシヤは黙って聞いていた。
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作者名:みりん | 作成日時:2023年3月13日 23時