早く出てきて ページ46
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「…大丈夫かな、イッペーくん。」
「しょうがないよ、早々に限界が来ちゃったんだろうねえ。」
早々じゃない気がするけど。
呑気なチシヤの言葉に戸惑いながら、私はイッペーくんが入った部屋を見つめる。
あの後、耐えられなくなったのか1人になりたい彼が籠ったのは独房だった。
ウルミが死んだ向かい側、どのターンも変わらず彼が入っているこの部屋。
ふと、彼がここから一生出てこないようなそんな感覚がして、ブルリと震える。
「…ハート」
私の首輪を見ながらチシヤが呟く。
ありがとう、おそろいだね。そう言えば、ほのかに目尻を下げた彼がため息をついた。
「早く終わればいいけどねぇ。」
「うん、…そうだね。」
ジャックは誰なのか。
こんなに人が死んでおいて、何食わぬ顔をしてプレイヤーに混じっているハートのジャック。
…早く、出てきて。
じゃないと、なんの関係もない人が次々死んじゃうから。
「入ろうか。」
「…うん。」
時間になった。
1人きりになった独房で、お願いだからもう終わって、誰も死なないで。と目を瞑りながら答える。
「ハート。」
続けざまに、どこかの部屋で爆発音がした。
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作者名:みりん | 作成日時:2023年3月13日 23時