27話 ページ27
それから、いくつか日が過ぎた。菜々子ちゃん達に綺麗な服を着せて、髪を丁寧に切って、それから私達は家族をすべて手にかけた。「じゃあ、私は私の家族の方に行ってくるから」と手を振った傑の姿を、忘れられないでいる。
傑の家族はすぐに終わった。私の方は、無駄に人数が多いから少しばかり手間取ってしまった。さすがに面倒だし時間も足りないので、壊したのは本家だけ。分家はどうせ大した力もないし、相伝もいない。
「君、どこに向かってるの？」
「すぐに分かるよ」
私の手を引いて歩く傑の手が少し冷たいことを、私は知っている。私はそれに気付かないふりをして、その手を握り返した。
私達は呪詛師に堕ちた。
一般人を大量虐殺したのは傑。
その証拠を隠したのは私。
つまるところ、罪の重さは変わらない。それでいい、と思う。同じだけの枷を抱えて、傑の見る世界で、傑の隣を歩いていたいから。私の隣に彼がいるなら、彼の隣に私がいられるなら、どんな道でもいい。そばに傑がいるのなら。それだけで。
「……犯罪者じゃん。なんか用？」
「運試し、ってところかな」
仄暗い願いを想っていると、久しぶりに聞いた友人の声が耳に届いた。ぱっ、と顔をあげるとそこは喫煙所で、硝子は当たり前のように馴染んでいた。犯罪者、とは私達か未成年喫煙を行う彼女か、どっちなのだろうか。
傑と硝子は何言か会話を交わして、硝子はガラケーを開いた。
「もしもし？夏油いたよ。あとA。…………そ、新宿。……やだよ、殺されたくないもん」
パコっと軽い音と一緒に画面を閉じて、「すぐ来るってさ」と彼女はため息と一緒に呟いた。誰が、なんて聞かなかった。私も傑も、頭に浮かぶのは1人だけ。
この世界の最強になり得た、五条悟ただひとり。
繋がれていた手が離れた。妙な不安を感じて、傑を見上げる。逆光で表情が読めなくて、更に恐怖を煽った。ぽんと頭に手が置かれた瞬間、それは綺麗さっぱり消えてなくなる。どうやら、私は相当彼に依存しているらしい。
「私は悟の方に行くけど……Aは？」
「こっちにいるよ。久しぶりに硝子にも会えたし」
「そうかい、分かった」
また連絡するよ、と背を向ける傑を見送る。私と同じだけ依存してくれたらいいのに。そんなことを、ふと思った。硝子の方に向き直ると、彼女は後頭部をがりがりと掻いた。
「冥冥先輩、怒ってたよ」
「……だろうねぇ」
私の裏切りは、彼女にどれくらいの損をさせたのだろうか。
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作者名：べにしょうが | 作成日時：2022年5月7日 19時
