検索窓
今日:11 hit、昨日:3 hit、合計:3,747 hit

17話 ページ17

「利益を完全に度外視した考え、私には全く理解できなくて面白いよ」


先輩はくつくつと喉の奥で笑いながら、そう落とすように呟いた。いつもの細い瞳を目一杯開いて、私を上から下まで見つめる。執拗なそれに一歩下がると、先輩は目を細めて視線を外す。

「不躾にすまないね。……さて、今日の夕方には帰ってくるんだろう?今日は任務もないし、それまで稽古をつけてあげよう」
「……あ、……はい。お願いします」

……どうやら、とうに私の好きな人はバレているらしい。隠しているつもりはなかったけど、面と向かって言われると気恥ずかしさが勝る。

先程までとは違う種類の……何となく生暖かい笑みを浮かべながら、先輩はいつもの斧を手に取った。本当の武器を使うことに驚く暇もないまま、鼻先ギリギリにそれを突きつけられる。反射的に顔を引いた。


「さ、……おいで」
「随分と熱烈なお誘いなようで……っ!」


妖艶に先輩は私を誘う。初手は譲ってくれるらしいと悟り、私は短剣を手に飛びかかった。……狙うは、首。


_


……どれくらい、時間が経っただろうか。息も絶え絶えで汗もビシャビシャな私とは反対に、先輩は汗一つかかない。どこまでも余裕に、けれども隙は見せず、私を翻弄する。彼女が遊ぶように振るう斧を受け流すので精一杯だ。


「手加減、とか……っ、はぁ、あっても、いいんじゃないですか……!」
「ふふ、それじゃあ稽古にならないね」


必死に口を開いて恨み言を吐いても、先輩はそれを笑って流す。余裕そうな態度に怒りが湧いて、短剣を振りかぶったその時、轟音が聞こえた。と同時に、大きな呪力の気配。


「っ!?」
「……おや」


言葉では表せない音に固まる私と、目線だけ音が鳴った方向に向ける先輩。

焦って短剣を下ろした私を、先輩は斧の柄で思い切り小突いて倒す。背中から倒れて痛みに悶絶していると、切っ先が胸元に軽く触れた。


「どんな時でも、隙を見せてはいけないよ。Aは今、私に殺された」
「……そうですね」


返事をしながらも、私の意識はあの呪力に割かれていた。あんな大きな呪力を一気に放てるなんて、私が知ってるのは五条くらいだ。時間も時間だし、任務を終えて帰ってきたのだろう。


……どうして?

……高専の結界内で呪力を放つ必要があった?


思考が急激に回って、答えはそこに落ち着く。……つまり、それは、傑にも、何かあったのかもしれない。

18話→←16話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (10 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
11人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 夏油傑
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:べにしょうが | 作成日時:2022年5月7日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。