12話 ページ12
その日、私は傑の夢を見た。あの時されたみたいに、頭を撫でられて。違ったのは、彼の表情。ひどく慈しい物を見るような、……愛しげなそれを私に向けていた。ひどく優しい夢に、私は少しだけ泣きそうになったのだ。
目を覚まして、一体彼にどんな顔をして会いに行けば良いんだ、と頭を抱えたのも当然のことだと思う。変な顔をしてしまいそうだ、なんて本気で悩んでいたのに。
「沖縄、ですか」
「そうだ」
教室にいたのは私と硝子だけだった。2人揃って寝坊かな、と呑気に構えていたのに、先生が教室に入ってきても2人は来ない。さすがに不思議に思って聞いてみると、あの最強達は現在沖縄にいるようで。
アイツらは沖縄だ、と言った夜蛾先生の顔は険しい。
「なんで沖縄に?」
「星漿体の護衛の関係らしいが、俺も詳しくは分からん。ただ、悟が『沖縄の方が
明日には帰ってくるらしいがな、と先生は眉間を揉みながらため息を深くついた。
……星漿体の護衛任務についていたのか。高専の結界を保つ天元様の進化を遮る、重要な存在の護衛に。500年に一度の大掛かりなそれが、まさか今年だったなんて。それは、確かにあの2人に任せるしかないな、と独りごちた。
「今日は授業を休みとする。俺はアイツらと連絡を取らないといかないからな」
教壇に立って、開口一番先生は宣言した。私はパッと硝子と目を合わせて、同時にガッツポーズをした。勉強がさっぱりできない私には天国だ!一般教養なんか爆発して消えてしまえばいい。
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「……よし、硝子。遊ぼう」
「桃鉄やるか?」
「2人で?絶対それつまんないよ」
医務室という名の硝子の部屋で、肘を付いて文句を垂れる。彼女はにやりと笑って、桃鉄のソフトを片付けた。少し前に4人でやったのが懐かしい。1位はぶっちぎりで硝子、最下位は五条だった。いやあれは罰ゲームが本当に面白かったんだけど、残念ながら割愛する。
慣れた手付きで煙草を取り出し、火を付ける硝子。その様子をじっと見つめていると、彼女の黒い目が私を捉えた。
「……Aもいるか?」
「じゃあ、今日だけ」
差し出された煙草を受け取って、一緒にに渡されたライターで火を付ける。そうして、私は軽犯罪に手を染めた。……にっが、吸えたものじゃないね、これ。反射で出そうになった咳を飲み下していると、
「なんでアイツがいいんだ?」
と爆弾が投下された。
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作者名:べにしょうが | 作成日時:2022年5月7日 19時