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「降りるよ、アーヤ」
「ん。ありがと、翼」
ガタンガタンと揺れていた電車が停車し、ふわりと微笑みながら私の手を引く翼にお礼を言って電車を降りる。
最寄り駅から3駅。
行き先を告げられることなく連れられ、あまり馴染みのないそこをきょろきょろと眺めた。
煌びやかに彩られたモミの木が目の前に立ち、そこにはたくさんの人だかりが。
まだ、夕方にもなっていないからあまり分からないけれど、きっと夜になったらイルミネーションが綺麗なのだろう。
葉のない剥き出しの枝の至る所にイルミネーションライトが見えた。
この通りもテレビで見るようにキラキラと輝くのかと思うと何だかちょっと楽しい。
小さく笑みを浮かべながらそれらを見ているとクスッと笑う声が。
近づくとより分かる、前会った時よりも更に離れてしまった翼を軽く睨みながら見上げた。
「……笑わないで」
「ごめん。でもアーヤがあんまりにも顔に出てるから」
全く悪びれた様子を見せず、クスクスと笑い続ける翼に頬を膨らませ、前を向いた。
「クリスマスだね」
「ん。アーヤは家でクリスマスパーティーとかするの?」
こっちだよ、アーヤ、と私の手を引く翼。
まるで迷子の子供を引率するように先導して歩き出すから、慌ててその横に駆け寄った。
見た目はスラリとした白いしなやかな手はこうして繋がれると意外とゴツゴツとして、私よりも大きくて。
すっぽりと隠された自分の手に少しだけ力を込めた。
一瞬ぴくりと動いた翼のそれはまるでお返しだと言うように先程よりもほんの少しだけ力が込められて、密着する。
先程からドキドキと高鳴る胸に小さく息を吸って、また前を向いた。
「ここだよ」
「ここって……」
「さぁ、入ろ」
到着したのは一軒のお店。
街道からは少し逸れた所にあり、気付かずにそのまま通り過ぎてしまいそうな素朴なそのお店は木造で出来ているようで、でもどこか優しくて懐かしい雰囲気がした。
カランコロンと高くて澄んだ美しい音をドアベルが奏でる。店内からはコーヒーの芳しい匂いが鼻を擽った。
うわぁ、いい匂い……
思わず息を大きく吸っていると、翼が急に振り向いた。その表情はどこか悪戯っ子が悪戯に成功したような顔で。
そんな表情を浮かべた翼に首を傾げながらも足を踏み入れ……息を呑んだ。
「ようこそ、ブックカフェCalmへ」
にっこりと笑った翼。
その後ろには大きな本棚にびっしりと本が並んでいた。
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セダム(プロフ) - むっちゃんさん» わー、ありがとうございます!!更新遅くてごめんなさい!続きも楽しんで読んでもらえればと思います! (2021年12月24日 21時) (レス) @page44 id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
むっちゃん - 続きが気になって気になってたまらなく、気づいたら読み終わってました。最高です!! (2021年11月25日 22時) (レス) @page39 id: fa31dfe0b6 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 萸衣さん» あちらの方も読んでくださりありがとうございます!!どちらも更新不定期ですが更新した時は読んでくれると嬉しいです。頑張ります! (2021年7月31日 19時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
萸衣 - pixivでもセダムさんの作品読ませていただいています。とても面白いのせこれからも更新がんばってください。 (2021年3月29日 20時) (レス) id: 1e603ecb86 (このIDを非表示/違反報告)
セダム(プロフ) - 千香さん» 大丈夫ですよ(^^)消しときますね! (2019年8月26日 22時) (レス) id: 188dd23746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セダム | 作成日時:2019年4月20日 19時