甘い想いは知っている

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「……そう、なんだ。これ、普通のことなんだ」




ぽつりと呟くようにそう言った大和くん。
それに大きく頷く。


そう、普通のことなんだよ。
大和くんのその気持ちは恋を知ったらきっとみんなが抱くもの。

大和くんが性格悪いなんて言ったら世の中の人みんな性格悪いよ。



そう言うと小さく笑う大和くん。




「それはさすがにないだろ。……でもありがと、立花」




月光が私たちを照らし、その下で笑っていた大和くんがふと何か思いついたように突然ニヤッと悪戯っぽく目を光らせた。


……嫌な予感。




「じゃ、俺、まだお前のこと諦めなくていいよね？」




……え？




大和くんの言葉の意味が理解できなくて困惑していると大和くんが身を乗り出して念を押すように口を開く。




「" 恋は愚かで制御も叶わない "……さっきそう言ったよな？」



……言った。



「俺の恋も例外なく愚かで制御不可だからさ、諦めるなんて潔いいこと出来なそう」



えっ……



「だからさ、立花。俺、お前のこと諦めないことにする。っていうかそうするしかないみたい。ごめんな」



……。



えっ！？




「じゃあそういうことで！」




そう言ってスタスタと歩き出してしまう大和くんの後ろ姿を呆然と見つめる。



は？え？あ……いや、えっ！？




「ちょ、ちょっと待って……」



「んー？」



「いや、その……私、好きな人が……」


「……別に今立花に好きな奴がいてもいいよ。俺がその心、奪い返すだけだから」




……言葉の使い方がおかしい！

奪い返すって私、別に大和くんのこと好きになったことはないもん。

友達としては好きだけど。


それに……




「な、何かキャラ違くない？」


「いや、立花って想像以上に鈍そうだからもっと直球でいこうかなって」


「……鈍くないよ」


「本当にそう思う？」




うっ……



そう言われて次々とKZのみんなの呆れ顔が浮かんだ。



……思えない。




「ふっ、立花、顔に出てる」




本当に可愛いなあ 、って言う大和くんに顔が熱くなる。



楽しそうで何よりだけど、やめて！




そう思いつつも、もうあの夏の日のように笑い合ったり話せないのかな……なんて思っていたからか、何だか嬉しくて、私も笑みを零した。


ヒラヒラと黄金色の銀杏がふわりと舞う中、2人で駆け出す。蜂蜜色の満月が優しく私たちを見守っていた。





____________ 第4章 fin* _____________




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