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ダイニングに近づくに連れ、香ばしい香りが、鼻をくすぐる。
「さぁ、ここだよ。お座り。……ノルン、お前もだよ。」
ふわっと白い毛玉が物陰から現れた。
「もふ子！」
何処かに隠れていたのか、いつの間にかもふ子も、席についている。
「じゃあ、ひとまずご飯を食べよう。それから、ゆっくり話をしよう。わかったね、ふたりとも。」
「はい。」
「では、この世の全ての命に感謝を捧げる。いただきます。」
「い、いただきます…。」
「いただきます!!」
「お、美味しい。」
これは止まらなくなる。
部屋中いっぱいに溢れる優しいバターの香りは自然と心を踊ろされる。
出来たてグツグツのシチューだろうか、肉やじゃがいもがゴロゴロはいっていて、肉はホロっとくずれ、じゃがいもはちょうどいいくらいに火が通っており、ホクホクしている。
あっさりでほっこり体に染み入るシチューは今までの疲れを無くしてくれる。
隣に並ぶフランスパンの香ばしい香りと噛み締めるほど甘味が溢れでてきて、シチューととても相性が良い。
自然と頬が綻ぶ。
「―――あら、お嬢さん。そんなに勢い良く食べて大丈夫？もしかしたら、私が毒でも入れてるかもしれないわよ。私、ここら辺では、西の魔女なんて呼ばれてるんだよ。」
手が止まる。
そうだ、私は何もしてないのに、こんなに親切にしてくれるのはおかしいのかもしれない。で、でも、あんな優しくしてくれたし…。
なにか試しているようなその瞳から目を離せない。
「ジョーダン。冗談だよ。毒なんかはいっちゃいないさ。ついつい反応がかわいくてねぇ。しかし、見知らぬ人にはある程度警戒しないと後で痛い目見るよ。」
とオリヴィアさんはケラケラと笑う。
確かにそうだ、今回はオリヴィアさんみたいな優しい人が拾ってくれたから良かったが、もし、そうじゃなかったら…。そう考えただけで少し寒気がする。
「はぁ、ホントくそばばぁが…。」
「ノルン、今回は聞こえなかったことにしてあげよう。
…まぁ、西の魔女なんてのはあながち間違っちゃいないが。
あぁ、すまない。食事中遮ってしまってすまない。食事を続けてくれ。」
私はまだ冷めきってない自分のシチューを見つめ、残りを一気ににかき込んだ。
「「ごちそうさまでした。」」
「お粗末さまでした。」
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作者名：Chiroru | 作成日時：2019年1月3日 15時
