変わらぬ愛の先にあるもの

風邪 ページ31

『すみません・・・今日はお休みさせてください』



「最近忙しかったからね。ゆっくり休んどきなさい」



ケホケホと携帯を耳にあてながら咳き込む。昨日からなんか体調へんだなーと思ってたら、朝起きたら38度以上の熱が出てた。



普段風邪ひかない人って、いざひくと症状が結構重かったりする。私もそのタイプで、数年ぶりに感じる洒落にならないくらいの頭痛に気が滅入りそうになった。



体に鞭打って氷嚢を用意し、頭に乗っけてまたベッドに潜り込む。辛くて眠りにつくことすらできない。



風邪をひいたときって、どうしたって心が弱る。そういや前に風邪をひいたときは姉さんが側でみてくれたっけ。自分も体弱いのにつきっきりで看病してくれて、頭が痛くて眠れないというと一定感覚で額を優しく撫でてくれた。



その時のひんやりとした手の感触と、優しい姉さんの顔が、不可抗力で思い出してしまう。姉さんがいないという事実が、今さら自分を襲った。



そのまま、次第に意識が朦朧としてきて、ゆっくりと眠りにつく。



瞼を閉じる際流れた水滴は、きっと熱のせいだ。









．









ーーーーーー
土方side



「え、Aが風邪！？」



近藤さんから告げられた言葉に思わず大きな声を出してしまう。そういえば昨日から様子が少し変だった。



「ああ、１日とは言えあの子の抜けた穴は大きい。俺達で頑張って回していくぞ！」



「そう言っときながらハーゲン抱えてどこ行くつもり何ですかぃ？近藤さん」



「おめーもな総悟。俺のマヨネーズ抱えてどこに行く」



「ちょいとごみ捨て場に」



「勝手に捨てるなよ人の私物を！！！」



実質機能すんの俺一人じゃねえかよと眉間の皺を揉む。Aも体調悪いなら言ってくれれば良かったのに・・・や、あいつの性格上ギリギリまで黙ってんな。



二人が職務放棄するってなら、俺だって今すぐ投げ出してAのとこ行きてぇよ。公私混同はダメだと必死に自分を宥めているもののどうしても心配が勝ってしまう。



「Aはみかんゼリーが好きですぜい。果肉入りのやつ」



急に総悟が俺の目を見ずに、そんなことをいってくる。



「てめっ」



「生憎今のAが呼んでるのは俺じゃ無いんでね。代わりにお願いしまさぁ」



その一言で火がついた俺は、通常の倍スピードで仕事を終わらせた。ちゃっかり押し付けられた総悟の分にも気付かずに。

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