052.鈍感 ページ7
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倉持
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真冬に行われた球技大会。
なんとかトーナメントの一回戦を勝ち抜き、次の試合まで御幸とふらふら歩いて時間を潰す。
「ひゃはは!お前相変わらずサッカー下手すぎだろ」
「はっはっはっ、ほっとけ」
歩いていると物凄く女子の視線を感じるのだが。
……ああ、隣に御幸がいるからか。こいつ、見た目だけは無駄に良いからな。
とくに気に留めずそのまま彷徨っていると「倉持、御幸」と呼び止められた。声のする方には、体育座りをして片手をひらっと上げる鼻の赤い葉月がいた。
「一回戦突破おめでと」
「さんきゅ」
今、どんな気持ちで笑ってるのか。
まだ未練があるのに、御幸に促されるまま友達に戻ったこいつは。
「葉月ぼっちなの?」とにやにや笑う御幸に、「幸子も唯もバレーしに行っちゃったの!」とムキになって言い返す。
「自分のクラスの女子のとこ行けばいーじゃん」
「……どーせ私はぼっちですよー」
「あ、認めた」
まるでこの前の喧嘩なんてなかったかのように、
つきあってた事実なんてなかったかのように、
自然に、2Bで過ごしてた頃と変わらないテンションで話す彼らに少しやきもきする。
「そういえば倉持、サッカーしてる時かっこよかったよ!」
「へ?……お、おお」
いきなり葉月の会話の矛先が俺に向いてドキリとする。
「周りの女子達も倉持くんかっこいいって騒いでたし」
さっき女子の視線を感じたのはそういうことか。ようやく合点がいった。
「モテ期到来だねよかったじゃん」
「嬉しくねーし」
そんな会話を繰り広げていると「葉月ちゃん、もうすぐ私達のクラス試合だって」と葉月と同じクラスの女子が呼びに来た。
「おっけーすぐ行くね」と葉月が頷けば、女子は先に体育館に向かった。
葉月は下ろしていた髪をパパッと手ぐしでまとめ、
手首につけていたヘアゴムを使って下の方で一つに結ぶ。
髪が少し伸びた。
御幸とつきあっていた頃でも、
御幸と別れたばかりの頃とも、長さは違う。
果たして違うのは髪の長さだけなのか。
葉月の気持ちは今、誰に向けられているのか。
「じゃーね、倉持御幸」
御幸のことを鈍感だとか言ってたけど。
俺のことをかっこよかったって褒めてから、
隣のメガネが黙り込んでしまったのを気づいてないなら葉月も相当鈍感だ。
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ましゅまろーず(プロフ) - 麻奈さん» 成宮くんはなんだかんだで葉月の幸せを願ってすれ違ってしまいました…書いてるこっちも辛いです(ノ_<) (2017年12月13日 19時) (レス) id: a527da2431 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろーず(プロフ) - ホイップクリームさん» 自分の気持ちを誰かに伝えるって本当に難しいですよね…ホイップクリームさんに共感していただき嬉しいです!高校生編では結局葉月はどっちともくっつきませんでした、、続編でもホイップクリームさんとお話できると嬉しいです!これからもよろしくお願いします(*´-`) (2017年12月13日 19時) (レス) id: a527da2431 (このIDを非表示/違反報告)
麻奈(プロフ) - 鳴いぃぃ…(´;ω;`)そんな鳴も私は好きだよォ…(;Д;)(;Д;) (2017年12月9日 8時) (レス) id: 4a91041800 (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - いつもお話していただいてすごく楽しいです! これからも仲良くしていただけたら嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2017年12月8日 22時) (レス) id: 05e300014f (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - なんかもうすごいです…上手く言えなくてすみません…!! 人に想いを伝える事の難しさが表されていてとても心に響きます!ましゅまろーずさんの作品本当に皆の想いが伝わってきますね!私には出来ません…すごく尊敬しています!! (2017年12月8日 22時) (レス) id: 05e300014f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましゅまろーず | 作成日時:2017年8月12日 11時